コラム・事例紹介

うのずくり 実行委員長 森美樹「港町の日常に“クリエイティブ”を根付かせる移住プロジェクト」

森 美樹(もり・みき) 岡山県玉野市

うのずくり実行委員長/ガラス工芸作家
広島県出身。岡山県・倉敷芸術科学大学でガラス工芸を学んだ後、アトリエとして玉野市・宇野駅東の共同アトリエ「駅東創庫」に出会い、2007年に宇野へ移住し、創作活動を行う。半分地元民、半分ヨソ者の立場で、まちづくりに携わる。

宇野に「住んで」「つくる」から「うのずくり」

岡山県玉野市の中心市街地・宇野地区は、「晴れの国 岡山」のなかでも特に気候の良い、瀬戸内海に面した港町です。宇野港は、瀬戸大橋ができるまで本州〜四国(香川県高松)の玄関口として栄えた港ですが、その賑わいは人口減少や高齢化に伴って薄れています。

宇野港からは島全体を使ったアートフェスティバルなどで有名な直島や豊島へのフェリーが出ているため、アート鑑賞を目的とした旅行客が年間数十万人もの人が通るものの、宇野のまちに立ち寄られることはほとんどありません。商店街も今はシャッター(が閉まったままのお店の多い)商店街となっています。

瀬戸内海にのぞむ宇野港の風景
瀬戸内海にのぞむ宇野港の風景

そうした状況のなか、「うのずくり」は、岡山県・玉野市中心市街地活性化協議会事業の一環として、「クリエイティブカップル移住プロジェクト事業」(7年半で50組、100名のクリエイターの移住が目標)を行う目的で、2011年6月に発足しました。

「うの“づ”くり」ではなく「うの“ず”くり」であることには、「住んで+つくる」という意味が込められています。ものづくりや交流づくりも含め、住んでいるみんなでまちをつくっていこうというプロジェクトです。

ゆっくりと、着実に、まちの日常に“クリエイティブ”を根付かせていく

うのずくりでは、クリエイターを中心にこのまちに住む人を増やす「移住プロジェクト(住まいづくり)」と、クリエイティブな移住者やまちの人たちによって「お店をつくるプロジェクト(店づくり)」の主に2つのプロジェクトを行っています。

ここでいうクリエイターとはいわゆる「ものづくり」をする方だけでなく、日常生活を自分たちの手でつくり、楽しみ、慈しむことができる方々のことです。場所や時間、交流等を自分たちの手で楽しんでつくってゆくことができる方々、たとえば飲食店はもちろん、極端にいうと将棋場も、うのずくりではクリエイティブと捉えています。

うのずくりは、そうした趣旨に共感する20代〜60代の市内の有志メンバー11名が中心となって、移住者も含め、まちのみんなで話し、無理のないようにゆっくりでも着実に実行する部隊として活動しています。

発足以来2年目を迎えたその活動は、実際に関東・関西から3組のカップルが移住されたことをはじめ、宇野での滞在場所となる港食堂&ゲストハウス「lit」ができたり、活動の拠点となる交流スペース「uz」が生まれたり、「ずくりワークショップ」「朝市ごはん会」等のイベントが充実してきたりと、新たな拡がりを見せています。

市外に出られた地元出身の若い方がUターンするケースも見受けられるなど、クリエイターが増えることによって、うのずくりの活動もより活発になるという循環が起きつつあり、まちに文化的な要素が根ざすことによって生まれる変化の手応えを少しずつですが感じています。

住まいづくりと店づくり、そして“大掃除”の効能

住まいづくりでは、移住者の方々に具体的な物件を紹介し、大家さん・不動産屋さんとのやりとりをし、また、引っ越しのお手伝いや物件によっては片付けやゴミ出し等の大掃除のお手伝いも行います。

実際に移住していただくには、まず、そのまちの環境や住んでいる人、まちの雰囲気を知っていただくことから始まります。一度訪れて「住もう」というわけにはなかなかいきません。数時間、数日間滞在しながら、まちの人や空気に少しずつ触れ、そういった短期滞在や中期滞在を繰り返しながら、だんだん「住む」ことのイメージを膨らましていただきます。

次に、職づくり・お店づくりとして、移住者の方をまちの方にご紹介し、お仕事へとつなげてゆくお手伝いをします。また、移住者がお店をつくる際、改装・掃除・片付けのお手伝いをしたり、使われなくなった家具・道具等を運び込み、お店をつくるお手伝いをしています。

こうした住まいづくりやお店づくりに関わるイベントとして、うのずくりの大切な仕事だと考えて行っているのが「うのの大掃除」です。このイベントは、移住者の方々の住まいや工房として使われる物件の大掃除や、いらないものを処分したりする片付けのお手伝いをするものです。

「東山ビル」の“大掃除”の風景
「東山ビル」の“大掃除”の風景

ただし、移住者が見つかっていなくても大掃除を行うこともあります。たとえば、昨年末大掃除を行った「東山ビル」は十数年間、荷物が置かれた状態のまま使われなくなっていたのですが、大掃除を行ったことで、今秋のイベントを行う会場として活用することへとつながり、先々は受け入れた移住者の方の店舗として活用することを考えています。

大掃除をすることによりまちのなかに新たな “すきま”ができ、それを何かの機会に活用するという次の段階に進むことができます。掃除を行い“風通しをよくする”ことは、建物にとってもまちにとっても必要なことで、うのずくりの大切な仕事だと考えています。

出会いやつながりのきっかけをつくるワークショップ(イベントづくり)

うのずくりの主な活動は、こうした「住まいづくり」「職づくり・お店づくり」に加え、「娯楽づくり・イベントづくり」と、これらの活動を将来の移住者となってもらう方に知ってもらうための「情報の整理、発信」の4つにまとめることができます。

「娯楽づくり・イベントづくり」は、移住して来た人も地元の方も楽しめる文化的娯楽をつくるお手伝いとして行っているものです。イベントづくりとして今年3月から年6回(隔月)を計画しているのが、ワークショップ「ずくりワークショプ」です。

新しい文化(カルチャークリエイティブ)をまちや人に既に根付かせている活動をされている方々、 柔軟な発想でまちづくり、人づくり、仕事づくり、住居づくり、遊びづくり、文化づくり等行われている方々を講師にお招きしてお話しを伺い、毎回テーマに沿ったワークショップを行っています。

講演ではなくワークショップ形式にしているのは、小さなことでもみんなで考えて、話し合う(つくる)場を増やしたいためです。これまで「東京仕事百貨」の中村健太さんやまちのユニークな隙間空間を“間借り”できるサービスを展開している今村ひろゆきさんらをお迎えし、各回とも講師の方に沿ったテーマでワークショップ行いました。これには地元住民を中心に近隣の岡山・倉敷・高松等から毎回約30名の方々が参加してくださっています。

ずくりワークショップ開催時の様子
ずくりワークショップ開催時の様子

ワークショップは、新たな出会いやつながりのきっかけとして充実した場となり、また、ワークショップのなかで生まれた様々な柔軟なアイデアが、その後少しずつかたちになり動いていたりもします。回数を重ねるごとに参加者の方の積極的な意見を聞く機会が増え、ワークショップの効果を実感しています。

“朝市ごはん会”から生まれた新しい日常の風景(娯楽づくりと情報発信)

「娯楽づくり」として行っているのが、玉野魚市場(シーサイドマート)さんにご協力をいただきながら今年2月からスタートした「朝市ごはん会」です。

皿、箸、醤油、酒、コンロ(七厘)、まな板、包丁等を参加者各自が持参し、朝市で売っている魚介類をその場で食べる。それぞれの一番美味しい食べ方で!という「ごはん会」です。

朝市ごはん会の風景
朝市ごはん会の風景

お刺身、焼き魚、焼き貝等々……それをあてにしながら、お酒を持参して自分の好きな肴をいただくもよし、ごはんを持ち込んで海鮮ドンブリにするのもよし。みんなでわいわいしながら、それぞれの朝市を楽しみましょう!旬の海の幸をいただきましょう!まずは自分たちが楽しみましょう!ということをコンセプトで始まったこのイベントには、地元の方はもちろん岡山や高松からも様々な方にお越しいただき、出会いと交流の場となっています。

回数を重ねる度に徐々に恒例化し、「朝市ごはん会」と謳わなくても、食べたい人が食べたい日に魚市場に行って机と椅子を用意すると楽しむことができる……最近はそういった日常が生まれつつあります。

こうした活動の告知やレポートは、移住して来て欲しい人たち、また宇野へ観光等を通じて一度訪れて欲しい人たちに向けて届くようにと、ホームページやFacebookを使って発信しています。

うのずくりの情報を発信するウェブサイト
うのずくりの情報を発信するウェブサイトwww.unozukuri.com

リノベーションで滞在と交流の拠点を整備

旅館だった建物をリノベーションした港食堂&ゲストハウス「lit」
旅館だった建物をリノベーションした港食堂&ゲストハウス「lit」

そしてこの8月、宇野港・駅近くに元旅館の建物を利用した港食堂&ゲストハウス「lit」がオープンしました。

うのずくりのメンバーが運営するこの施設は、宇野へ移住しようという方の滞在拠点として整備されたもので、「家探し、まち散策」が行いやすくなったのはもちろん、
直島・豊島・小豆島等の島々や高松への玄関口として旅を楽しみたい観光客の宇野の滞在や、地元の方々にも気軽に立ち寄れる空間となっています。

また、9月にはうのずくりの拠点となる「uz」がオープンします。これは宇野駅・港近くの商店街のなかにある鉄板焼き屋さんだった店舗を、クリエイターたちがリノベーションしたものです。地元の方と移住者や訪問者の方々との交流できるスペースとしての活用を中心に、クリエイターの方々が活用できるよう作品の展示やショップスペース、日替わりカフェや、イベント・ワークショップスペースとしても使っていきたいと考えています。

オープンを間近に控えたうのずくり交流拠点「uz」のイメージ
オープンを間近に控えたうのずくり交流拠点「uz」のイメージ

地元の方の理解と協力が、なによりの励みに

2年目を迎えるうのずくりのこういった活動を通して、これまでに埼玉からジュエリーデザイナー、東京から鞄作家、大阪からWebデザイナーと、3組のクリエイターの方々が移住をされました。少しずつではありますが、楽しい店舗づくり・空間づくりが行われています。

移住を進めていくにあたって難しいのは、移住者の負担になる資金面の問題や移住者の方にあった物件がなかなか見つからないことです。クリエイターの方にとって住まい・工房・ショップのスペースはとても重要なポイントです。

クリエイティブな活動に理解のある大家さんや不動産屋さんとのつながりは、偶然の出会いのような“縁”があってこそかたちとなる部分があります。そうしたことから移住希望者の方々には待っていただいているのが現状です。

また、ご紹介できる建物でも下水が整っておらず、環境整備のための初期費用がかかり足踏み状態のところもあります。そういったハードルの高い部分を何とか周りの皆で歩み寄りながら乗り越え、ひとつひとつかたちにしてゆくのが現在の目標です。

5年前、ガラス工芸作家である私自身が宇野に移住する際には、地元の方々に本当にお世話になりました。アーティストやクリエイターという立場のヨソ者が、住まいをはじめとする日々の暮らしやその仕事を地域に根付いたものにしていくには、地元の方とのご縁とご理解がないと難しいことを痛感しました。“半分地元民、半分ヨソ者”として宇野のまちに暮らしている私の経験を、うのずくりの活動にも活かしていきたいと思います。

まだまだ地元の方にはうのずくりの活動の認知度が低いところもあるため、続けてゆくなかで少しずつ理解していただけたらと思っています。地元の方の理解や協力は、何よりも私たちの活動の励みになり大きな力となります。

登録日 2012年9月14日(金曜)00:00

ログイン

新規会員登録はこちら

メールマガジン配信内容募集中

マチイベ!(街のイベント)募集

-中心市街地活性化-まちづくり-サイト内検索

-中心市街地活性化-まちづくり-もっと詳しく検索する

好きなまちで挑戦し続ける

街元気パンフレット

街元気サイトツイッター

街元気facebook

  • -中心市街地活性化-まちづくり-経済産業省
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中小企業基盤整備機構
  • -中心市街地活性化-まちづくり-全国商店街支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中心市街地活性化協議会 支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト