コラム・事例紹介

宿場JAPAN 渡邊崇志「まち・人・世界をつなげる、現代の『宿場』づくり」

渡邊崇志(わたなべ・たかゆき) 東京都品川区

株式会社宿場JAPAN代表取締役社長 ゲストハウス品川宿館長
1980年生まれ。2004年明治大学商学部産業経営学科卒業。2008年企業を退職して渡米。帰国後、同志社大学大学院「ソーシャルイノベーション型再チャレンジ支援教育プログラム」を修了後、旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会で活動。2009年10月にゲストハウス品川宿を開業。2011年3月に株式会社宿場JAPANを立ち上げ、現在に至る。

海外に出て考えた、僕ら世代が担うべきミッションとは

ゲストハウス品川宿
北品川本通商店街の通りに面する「ゲストハウス品川宿」

高校3年の夏に家業を継ぐか、家を出るかの決断を迫られた僕は、漠然と抱いていた「ホテルマン」への憧れから、観光を学べる大学に進学し、品川でひとり暮らしを始めました。

大学時代、学費は奨学金でまかなえたものの、生活費は朝早くから深夜までのホテルのアルバイトで稼ぎました。長く働き続けることで時給も上がり、貯金が少したまる度に休みを取って、バックパックを担ぎながらの貧乏旅行へ。

数ヶ国を旅するなかで知り合った海外の同世代の仲間たちとの文化や考え方の違いは新鮮でした。特にアジアの同世代の意識の高さや貪欲さは、のんびりと育った僕にはとても刺激的で、僕たち日本人はいかに平和な生活をしているのかを気付かされました。

僕たちは戦争を体験した祖父母をもち、高度経済成長期に休み返上で家族を支えた父母のもと、大きく揺れ動いてきた時代のなかで豊かな生活を過ごさせてもらってきた幸せな世代。しかしこの先、子どもや孫の世代はどうなっていくのか、そのとき僕たちにできることは何なのか?

旅を続けるなかで、世界の人々がそれぞれの国の事情を抱えながらも、過去の歴史や国益を超えて、これからのより良き世界を共に創造することができないだろうか、と考えを巡らすように。そのなかで、僕ら世代へのミッションとして「国境を越えて、個人と個人がつながりを持ってお互いを理解しあうこと」を強く認識するようになりました。

10年越しの夢、念願のゲストハウスを開業

地元でバックパッカーを対象にしたゲストハウスを開けたら、と淡い夢を抱き始めたのは10年ほど前。しかしながら事業化しようと具体的に考えたのはその8年後、勤めていたメーカーを退職し、半年の渡米後、2008年9月から社会人学生として通った同志社大学大学院のプログラムで「市民バンク」の片岡勝氏、「NPO法人edge」の古野茂実氏に社会企業家として頑張っている人たちの話を伺ったことからでした。

また地元の「品川宿周辺まちづくり協議会」の方々との出会いも大きく、その縁から品川宿の観光案内所での手伝いや、近くの旅館での無賃修行、地元スーパーのアルバイトを始めることに。自治体やまちづくり協議会ではプレゼンをする機会もいただき、短期間で地域との結び付きを深めることができました。

そんななか2009年8月に、北品川本通り商店街にある休業が決まったビジネスホテル物件と出会いました。すぐさま金策に走り、またコストを抑えるため出来る限り自分たちの手で改装を加え、同年10月、念願の「ゲストハウス品川宿」のオープンへとこぎ着けました。

「ゲストハウス品川宿」のイメージ画
「ゲストハウス品川宿」のイメージ画。かつての東海道品川宿をバックパックを背負った旅行者やまちの人々が歩く、過去と未来が融合した景色を描いている
歌川広重の浮世絵「東海道五十三次 品川」
歌川広重の浮世絵「東海道五十三次 品川」。左のイメージ画はこの構図を元に描かれている

地域融合型ゲストハウスとは?

ゲストハウス品川宿は「地域融合型ゲストハウス」と銘打ち、敢えてキッチンもお風呂も置かないシンプルな旅館にしました。宿泊者には周辺にある飲食店や銭湯、商店へと出かけてもらう機会を増やすことによって、まちや周辺の住民たちとの関わりを楽しんでもらう仕掛けをつくったのです。

町会、自治会、神社などのお祭りに参加する機会もつくり、また自らもまちづくり協議会とイベントを共催したりなど、外国人バックパッカーにとってじかにまちと触れあえる喜びは大きく、季節を変えてのリピーターも増えています。また地域情報をHPだけでなく、facebookやtwitterでリアルタイムに発信しているので、世界中の人々に広く早くまちの魅力を伝えることができるのも特徴です。

僕たちが考えるゲストハウスの仕事は、「まち」と「人」とのつながりを大切にする、いわば両者の仲介役であり、旅館業の枠を超えた「感動プロデュース業」だと自負しています。

毎日、世界中から旅行者がゲストハウスを訪れ、「この部屋は世界一狭いよ」と笑う一方、人との出会いや地域に息づいている歴史や文化に感動して帰国していきます。そして友人や家族に魅力を伝え、その人々がまた訪れ、宿とまちに惚れて、と連鎖していき、2010年末までに53ヶ国から、延べ5000泊以上を品川宿でお過ごし頂いています。

地元のラーメン屋が外国人でいっぱい
地元のラーメン屋が外国人でいっぱい
宿泊客と一緒にまちのお祭りに参加
宿泊客と一緒にまちのお祭りに参加

多文化共生の基盤づくり、現代の「宿場」を日本各地に!

ここ品川宿は、江戸時代には東海道第一の宿場町として栄えた場所でした。交通の変化で、現在でこそその機能は果たしていないものの、そもそも宿場とは、旅行者や通りがかりの見知らぬ人を受け入れるオープンな場所。そこでかつての“宿場町マインド”を取り戻すべく立ち上げたのが、「宿場(シュクバ)JAPAN」プロジェクトです。世界中の人と地域とをつなぐゲストハウスを新たに「宿場」と呼び、日本中に「宿場」を増やして多文化共生の基盤をつくろうと、2011年3月にスタートさせました。

その背景には、ゲストハウス品川宿に訪れる外国人バックパッカーのニーズに気付かされたことがあります。彼らは日本各地で、僕らと同様の理念を持つ地域に根付いた安価なゲストハウスに泊まり、長く旅を続けたいと思っている。けれど日本にはまだ少ないのが現状です。だからこそ、彼らにできるだけ多くの日本の地域に、文化に触れて楽しんでもらいたい、そんな願いが「宿場JAPAN」プロジェクトに込められているのです。

各地での「宿場」づくりに向けて、「宿場JAPAN」プロジェクトでは、僕自身の経験を元に組んだ“修行”プログラムで地域融合型ゲストハウスの経営ノウハウを提供して未来の宿主である「コミュニケーター」を養成し、開業後も後方支援します。

僕自身が「人脈、お金、ノウハウ、物件」のどれひとつとして無い状況で動き出し、開業からがむしゃらに走り抜けた2年、地域の方々の支えがあってここまで来ることができました。この経験をもとにゲストハウスをまちづくりのひとつのアイデアとして役立てることができれば、と考えています。

コミュニケーターは、宿の運営や地域への主体的な取り組み方を学んだ後、地域に戻り、まちづくり活動を実践しながらゲストハウスをつくります。ゲストハウスを核とする「宿場」の出現によって、地域にコミュニティと雇用が同時に創出でき、またゲストハウス同士がネットワーク化することで、地域間交流も生まれるのです。

現在、プロジェクト第1弾として、長野県須坂市で地域融合型ゲストハウス計画が進行中です。コミュニケーターとなるのは、同市出身で、海外での日本語教師の経験を持つ女性。彼女はゲストハウス品川宿での修行を経て、地元で朝市の手伝いや、自らイベントを開催するなど、まちのニーズを掘り起こし、コミュニティを創出すべく奮闘中です。ゲストハウスは蔵造りの民家を再生し2012年秋のオープンを予定。新たな「宿場」が「まち」と「人」をつなげ、地域活性化の一端を担っていきます。

宿場JAPANウェブサイトトップページ
宿場JAPANウェブサイトトップページ
長野県須坂市本町通りにある古民家
長野県須坂市本町通りにある古民家。右手がゲストハウスとなる予定の建物で、奥には中庭もある広々とした敷地を持つ。1階入口にはカフェを計画している

関連リンク

宿場JAPAN
ゲストハウス品川宿
旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会

 

登録日 2012年1月06日(金曜)00:00

ログイン

新規会員登録はこちら

メールマガジン配信内容募集中

マチイベ!(街のイベント)募集

-中心市街地活性化-まちづくり-サイト内検索

-中心市街地活性化-まちづくり-もっと詳しく検索する

好きなまちで挑戦し続ける

街元気パンフレット

街元気サイトツイッター

街元気facebook

  • -中心市街地活性化-まちづくり-経済産業省
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中小企業基盤整備機構
  • -中心市街地活性化-まちづくり-全国商店街支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中心市街地活性化協議会 支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト