コラム・事例紹介

まちづくりQ&A「地域資源を生かした持続的な観光まちづくり」~オンパクで地域資源を商品に、そして産業に~鶴田浩一郎(PART2)

  • 鶴田 浩一郎

    鶴田 浩一郎(つるた・こういちろう)

    NPO法人ハットウ・オンパク代表理事

    1952年大分県別府市生まれ。株式会社鶴田ホテル(ホテルニューツルタ)代表取締役社長を務めながら、別府のまちの活性化に尽力。数々の観光イベントを企画、成功に導く。2001年より、別府の地域資源を存分に活用した観光客参加交流型の取り組みである別府八湯温泉泊覧会(通称:オンパク)を開催。オンパクによる地域活性化手法の普及にむけ、2010年にNPO法人ジャパン・オンパクを設立し全国各地の地域活性化を目指す。新しい別府づくりの取り組みが評価され、国土交通省「観光カリスマ百選」に認定されている。

鶴田さんが大分県別府市で取り組んでいるオンパクは、地域にもともとある資源を見直し、商品として展開することで、地域の魅力を伝え、まちのファンを増やしていく試みです。そして、オンパクは地域資源を生かした新たな産業を創出する役割を担っています。
PART2では、地域資源を商品に、そして産業に育てていくオンパクの具体的な進め方について、またオンパクを通じたまちの変化についてお話を伺いました。
(PART1から読む)

オンパクの進め方

新たに必要な産業を創り出すためのテーマ

――「健康と美」のテーマでは、オンパクをきっかけに新しい事業が次々に生まれているそうですね。

このテーマは、ほかの4つとは異なり、もともと別府になかったものです。先に述べたとおり、私たちの最大の目的は別府を保養滞在型温泉地へと転換することです。そのためには時間をかけてでも温泉にまつわる健康産業や癒しを与える産業の発展が必要不可欠です。「健康と美」はわれわれが新しい文化として根付かせたいものだから、一番力を入れているテーマです。

現在のオンパクでは、ヨガやエステ、マッサージのプログラムがとても多いんですが、こういう技術を持っている方は、もともと別府にはあまりいないんです。だから、オンパクをきっかけに別府に来て起業してもらう。たとえば、大分や北九州など外で仕事をしている方々が別府に興味を持って「温泉と組み合わせて仕事ができたらいいな」と思ってやってくる。こういう人たちを別府に集積させていく。その人たちの気持ちを最大限に活かして、別府で起業してもらうこともオンパクの大切な役割なんです。人が集まっていくうちに、まちが変わっていきますからね。

――具体的にどのような事業が生まれましたか?

代表的な事例が「ファンゴティカ」です。別府の温泉泥を使ったエステティック商品ですが、これは別府の商店街に3代続く美容室の経営者、林昌治さんが開発したもの。イタリアのアバノ温泉名物である温泉泥(ファンゴ)エステを知り、技法を学んで、別府温泉の泥を使った化粧品を作り、サロンを作ろうとしていた。けれども、エステ事業には、役所への臨床データの提出や事業モデルの確立、人材の育成などさまざまな壁がありました。費用面でのリスクも大きすぎる状況でした。

オンパクでこの事業の後押しをすることができました。林さんには2001年の第1回オンパクから参加してもらって、1,000円という格安のプログラムで臨床用のモニターを募集してデータの収集を行い、お客様にアンケートを取って、提供するサービスや価格帯の調査を行いました。また、観光客が多く訪れるオンパク期間中にエステティシャンを複数名育成するなど、定期的に一定期間開催されるオンパクをうまく活用してもらって、少しずつ問題をクリアしていきました。そうして2005年に別府温泉の泥を使ったエステサロン「ファンゴティカ・ディセ」が開業しました。

別府の温泉泥を使ったエステ「ファンゴティカ」
別府の温泉泥を使ったエステ「ファンゴティカ」

プログラム化を通じて、地域資源の商品化を進める「地域の苗床」

――一つ一つのプログラムはどのようにつくっていますか?

一つ一つのプログラムは、オンパクの事務局スタッフによるスカウトと公募を並行して行っています。スカウトの対象は、老舗から新しく開店したお店までさまざま。いいお店ができたと聞くと、スタッフはさっそくその店に飛び込んでお店の人と話します。そして、この人たちと一緒になにかできないかな、と考える。スタッフはまちの動きに非常に敏感です。優れた事業者同士をコラボする企画を、オンパクスタッフで考えるのもおもしろいですね。たとえばエステティシャンとエクササイズの先生を組み合わせたりなどですね。

オンパク事務局では、ホームページやガイドブックなどによるPRだけでなく、プログラムの実施にあたっての企画・運営のアドバイスも行います。幸いなことに、オンパクは知名度がだいぶ上がってきましたので、公募は多く集まります。ただ、応募いただいたプログラムをそのまま出すのではなく、より良く「魅せる」ことが必要となってきます。アドバイス内容は多岐にわたります。ネーミングやキャッチコピー、写真、参加者への特典など少し意識するだけで集客力は大きく変わるんです。だからこそ、この部分はオンパクスタッフとプログラムを提供する方とで密に相談します。そこがオンパクのノウハウの一つでもあります。オンパクでなにかやってみたいという人のための「オンパク寺子屋」というプログラムづくりの勉強会も開催しています。

こうした地域資源の商品化はオンパクのオンパクらしいところ、特徴的な機能です。オンパクが積み重ねてきた実績は「信用力」を持っている。オンパク・ファン倶楽部の6,000名を超える顧客の存在が「集客力」を持っている。そして、オンパクを実施する中で培われてきたネットワークが「連携の機会」を持っている。3つの力がプログラムをしっかりと支えるんです。 参加者にとっては、自分たちの事業をプログラムとして実施することで、オンパクをテストマーケティングの場として活用できる。新たな顧客との出会いの場になりますし、事業が成長していくんです。 地域資源という種を、オンパクを通じて発芽させ育成していく。オンパクは地域の苗床として機能しています。

オンパクの取り組みが目指す「地域の苗床」のイメージ
オンパクの取り組みが目指す「地域の苗床」のイメージ

オンパク手法で、まちを元気に

別府再生、地域変革への手応え

――オンパクをはじめて十年余り、目標実現に向けてまちに変化は現れましたか?

別府鉄輪にある「富士屋Gallery一也百」
別府鉄輪にある「富士屋Gallery一也百」

先ほど述べた「ファンゴティカ」のような事業が生まれていることのほかに、例えば鉄輪では、明治時代に建てられた歴史ある旅館を改装して、ギャラリーとして再生させ、コンサートや美術展などのイベントを開催しています。このギャラリー「富士屋Gallery一也百」は、別府の歴史と文化を感じる空間として親しまれています。こうした、かつてからあるものを「資源」として認識し、磨きあげていく動きが別府全体で起こっていると感じています。団体歓楽型から、地域の資源を生かして保養型、滞在系の温泉地に変えていくという目的が、少しずつ実現しているように思います。

観光産業の人たちの意識も大きく変わりました。以前、彼らはプロモーションさえきちっとやれば、まちに人は来てくれると思っていました。けれども、まちを元気にしておかないと、いくらプロモーションしてお客さんが来たとしても楽しんでもらえず、リピーターがつくれないということにようやく気がついた。

そして、なによりも地域のことを語れる人が増えてきたことがうれしい。路地がきれいになったように、みんながまちに誇りをもってくれるようになった。それまでは別府のことを、「温泉しかないや……」と言っていた人が「別府の温泉はね、実はこんなところがあるんだ」というように、プラスの話ができるようになってきている。地域の人にまちをいいと思ってもらってもらえば、ブランド力が自然に形成される。それが間接的に観光に繋がっていき、外から人が来ることによってまちがさらに元気になるはずです。

とはいえ、実は一番言っておかなくてはいけないのは、環境は必ず変わっていくということ。今年よかった手法が来年もいいとは限らない。こうした活動は経営と一緒で油断するとすぐに潰れてしまうから、常にベストの手法を考えていかなくてはいけない。そこで満足してはいけない。いつも改善点を考えているんです。

地域資源の発掘、商品化で、全国を元気に

――オンパクの手法は全国に広がってきていますね。

別府で始まったオンパクですが、オンパクの手法は温泉がない場所でも成り立ちます。地域資源の発掘とその商品化、人材の育成を担いながら、地域資源を事業として育成していく自立・持続可能な事業を起こす手法は「オンパクモデル」として、現在、全国各地で導入され、地域再生の手法として取り組まれています。私たちは観光振興が目的でしたが、地域コミュニティの形成や過疎地域の活性化など、さまざまな地域課題の解決のためにこの手法が活用されているんです。

地域における磁力のあるヒトやモノやコトを、商品化して、プログラムとして体験してもらうことで、地元の素晴らしさに気づいてもらう、そしてそれを共有できる仲間を作ってもらう、それが地域コミュニティの形成や過疎地域の活性化に繋がっていくわけです。取り組みに必要なアドバイスやコンサルティングはもちろん、プロモーションについても私たちがオンパクで培ってきたノウハウを活かしていただくことができます。

2010年4月に立ち上げた一般社団法人ジャパン・オンパクでは、オンパク手法の普及や各地での活動支援を行っています。オンパク手法の実践を通して、多くの仲間が集まり、日本全国が元気になることが私たちの願いです。

 

 

登録日 2013年2月20日(水曜)00:00

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