コラム・事例紹介

【まちをつくる仕事】迫一成さん(新潟市上古町商店街振興組合理事/ヒッコリースリートラベラーズ代表)後編

いくつもの柱をもった事業展開と、ショールームとしてのお店

ヒッコリースリートラベラーズの店内(上段)、看板(中段左)、オリジナルTシャツ(中段右)、ブライダルギフト(下段左)「新潟のおむすび」(下段中)、リネンウォーター(下段右)
2010年にリニューアルオープンしたヒッコリースリートラベラーズの店内(上段)。手がけている多様な事業の記された看板(中段左)を掲げる店内には、オリジナルデザインのTシャツ(中段右)をはじめ、ブライダルギフト(下段左)や、新潟土産コンクールで金賞をとった「新潟のおむすび」(下段中)、デザインとブランディングを手がけた地域の福祉作業所でつくられたリネンウォーター(下段右)など様々なオリジナル商品が並ぶ

2001年に新潟の地下街・西堀ローサのチャレンジショップとしてスタートし、2003年から上古町(かみふるまち)商店街に出店したのをきっかけに、オリジナル雑貨の製造・販売とともに、商店街の情報発信やイベントの企画・運営といったまちづくり活動を行ってきた、クリエイター集団・ヒッコリースリートラベラーズ代表の迫一成(さこ・かずなり)さん。

結成から12年を経た現在、ヒッコリースリートラベラーズ(以下、ヒッコリーと略す)の活動はTシャツをはじめとしたオリジナル雑貨の製造・販売から、近隣の製造小売店と共同での商品開発、全国のクリエイターが製作した陶器等の日用品のセレクトショップのほかに、企画・デザイン業務や、オリジナル雑貨やデザインを活かしたブライダルグッズの製作、障害者就労支援施設等とのコラボレーションによる商品のブランディングなど、多岐にわたっています。

迫さんは、どのような考えのもと、10年以上にわたって商店街を舞台にこうした事業を展開してきたのでしょうか。

迫一成さん
上古町商店街振興組合理事/ヒッコリースリートラベラーズ代表の迫一成さん

意識しているのは柱をいくつも持つ、ということです。お店にはもちろん小売という面もあるけど、オリジナル商品もつくっているし、まちづくりと呼ばれることもやっている。デザインの仕事があって、ブライダル事業もあって、最近はブランディングも多くなっている。

このお店はいくつもの柱のショールーム的な位置づけを持った楽しそうな場所として見てもらえるといいなと思っています。

人はいろんな面を持っているから、まちに関心がある人は「まちづくりをしているヒッコリー」と思ってくれるし、デザイン系の人は「ヒッコリーのデザインはこうだよね」という話をしてくれる。商品を買いに来るお客さんには「お店」として認知されている。社会福祉に関わる人なら、障害者施設とコラボしているという印象を持ってくれる。

そういういろんな面をきちんと出せているのが強みじゃないかと思います。お店に商品を買いに来てくれていた方が結婚するという時に、「あ、ヒッコリーはブライダルもやっていたんだ」となっていく。Tシャツを買うお客さんは「Tシャツを買うお客さん」としてだけ存在しているわけではないですよね。結婚式もするし、新しい家に住んだら表札だって必要になる。

僕自身が若い頃は、同世代でデザインが好きそうな人がターゲットだったけど、それが徐々に広がって、2、3世代のライフスタイルがあるといいのかなと思っています。

目の前のお客さんしか見ていなかったり、表面的に捉えてしまうと難しいですよね。すごくいろんな側面が一緒にあるんだよ、ということはスタッフにも話しています。どこの誰が何をしているかわかりませんから、ライフスタイルのいろんな側面を見ていきたい。

地域の中につながりと仕事をつくっていく

こうした幅広いライフスタイルを見据えた事業展開とともにヒッコリーの活動を特徴づけるのは、地域とのつながりです。ヒッコリーでは、オリジナルのアパレル商品だけでなく、近隣の和菓子屋さん等ともコラボレートし、オリジナルのお饅頭や文房具などの商品開発を行っているほか、近年では市内の障害者就労支援施設の製品のブランディングも行っています。こうした地域とのつながりについて、迫さんはどのように考えているのでしょうか。

共同開発したお菓子や文房具等のオリジナル商品
近隣のお菓子屋さんや印刷・製本所と共同開発したお菓子や文房具等のオリジナル商品

ずっとお付き合いをさせていただいている手ぬぐい屋さんがあって、その手ぬぐい屋さんは手ぬぐいだけでなく、地元のお祭りの半被や横断幕をつくったり、いろんな染めをやっていたから、260年も続いているんだそうです。

幅広くいろんなことをやって、地域の人に支えてもらうから長く続いているんですよね。だったら僕らも、いろんなことをちょっとずつやりながら地域の人に支えてもらう仕組みをつくることが大事だと思ったんです。近くの和菓子屋さんにお饅頭をつくってもらったり、印刷屋さんにポチ袋をつくってもらったりというのは、自分たちのブランディングを近くにいる人と一緒にやる、ということです。

それは僕らの側にとっても、簡単な仕事をなるべく近くからもらう、ということでもあるわけです。「地方の中小事業者は値段で負ける」と聞くことも多いですが、ちゃんと目を向けていないだけで、地域には仕事が沢山あるんです。

「せっかく地域にいるんだから、その中にお金を落とそうよ」と思っています。もっと地域の中で対価の発生する仕事をするというかたちにしていきたい。「地域というのは相互扶助で、仕事として報酬をもらうもんじゃない」ということになってしまうと、結局何もできない。

お店のリニューアル時にテーマにしたことのひとつは、地域の人に買ってもらえるものを揃えた楽しい場所にするということでした。「応援するよ」と言ってくださる地域の人の気持ちをお金にも換えられるようにする。

そのために、地元の人にとってはちょっと非日常感があって面白いんだけど、外の人から見ると「新潟っぽい」というバランスを大事にしながらオリジナルの新潟土産をつくったり、全国のクリエイターのつくった雑貨をセレクションしています。地元の人にとっては県外の友人が来た時に連れてきたくなるような、上古町を可能性のある面白い場所だと感じてもらえるような店づくりを意識しています。

クリエイターがつくった陶器や雑貨をセレクトしたコーナー(左)と新潟のお土産コーナー(右)
各地のクリエイターがつくった陶器や雑貨をセレクトしたコーナー(左)と新潟のお土産コーナー(右)

「日常を楽しむ」ために──クリエイターとして、経営者として

ヒッコリーのwebサイトに掲げられたキャッチコピーは「日常を楽しむ」。イラストとデザインを出発点とするクリエイターでありながら、商店街の店舗を拠点としてまちづくりを含む多角的な事業を展開し、6人のスタッフを雇用している経営者でもある迫さんにとって、「楽しむ」とはどういうことなのでしょうか。

迫さんとヒッコリーのメンバーのみなさん
迫さんとヒッコリーのメンバーのみなさん。20代前半のスタッフが7人のうち4人がという若々しいメンバーはそれぞれ写真やデザイン、イラスト、建築といった専門分野を持っている

「日常を楽しむ」というメッセージは、お客様に日常を楽しんでもらえるような価値と機会をつくっていきたいということです。

もちろん僕たち自身が楽しくある、ということは大事で、それは出発点になっています。ただ、若い時はともかく、楽しいだけじゃ続かない。僕は継続したいんです。ちょっとずつ、できないことをできるようにチャレンジして、結果を出していきたい。

そういうこともあって、結成から6年経った2007年に、それまでメンバーが共同でしていた経営を僕一人が担当することにして、役割分担をはっきりさせたんです。クリエイターの仕事を続けながら、経営のこともしっかり考える。

数字や経営は面倒臭いことも多いけど、商工会議所に会費を払って面白そうな勉強会に出たり、経営革新の認定を受け、そこで学んだことを活かしてブライダル事業も本格的に始めました。インターネットで注文が入ってきやすくなる仕組みもつくって、コンサルタントを入れてちゃんと数字を見て、どうしたらビジネスとしてお金が入ってくるかという利益の取り方を常に考えるようになりました。

ヒッコリーのwebサイト
ヒッコリーのwebサイト

店売りは売り上げ全体の1/3にもならないんです。ブライダルやデザイン、ブランディングといった様々な事業があって全体が動いている。

まちづくりだって、いろんな人の思いを聞いて、それを何とかまとめたと思ったら怒られたり、予算も十分じゃなかったり、大変なことばかりで、ただ「楽しい」ことだけではありません。でも、他人から「楽しそうだな、いい仕事だな」と思われることは大事にしています。

若い人がこのへんでお店をやってなんとかなっている、という成功事例をつくりたいという思いがずっとあるんです。事実、新規出店は増えていますし、最近は、子育てが落ち着かれたお母さんが新しいお店を開くということもありました。それがきっかけになって商店街にも青年部ができて、まちづくりでも若手が活躍しやすい環境ができています。

まちなかに若手クリエイターの発表の場を開く

このように、クリエイターであるだけでなく、経営者、そして商店街振興組合理事としての顔を持つ迫さんは、上古町商店街を創作の拠点とし、また舞台とすることで、自身とメンバーの活動の可能性と継続性を広げてきました。

そのことを象徴するのが、2009年から始まったアートイベント「春山登山」です。空き店舗や空き家を若いアーティストの作品を展示する舞台に変え、まちに若い来街者を呼び込むこのイベントは、クリエイターの立場からこそ展開しているものだそうです。

「春山登山 2011」のチラシ
春山登山 2011」のチラシ(部分)

僕たちのようなクリエイターは、「求められたものをつくる」のではなく、「自分たちがつくりたいものをつくる」という思いが根幹にあります。だから、ヒッコリーのメンバーも、それぞれが作家として評価されたり、クライアントから指名されるような人になることを目標にしています。

ただ、新潟にはギャラリーも多くないし、借りるとしても結構なお金がかかる。専門学校を出たばかりの若いイラストレーターがそういう場所で展示をするというのはリアリティがない。でも、作家としてやっていくには、作品を見てもらう場所が必要です。

僕たちは店を持ったり、そこで展覧会をやったりすることで、ファンになって応援してくれる人がいたから、「がんばろう、続けよう」という気持ちになれた。若い子たちにもファンをつくっていけば、“何かをつくる”ということを続けてもらえる。

商店街やまちにはそういう展示のできる面白い場所が沢山あります。空き店舗などを上手に使って、その環境づくりをしたいんです。冬が寒い新潟のまちでは、春が本当に待ち遠しい。春が訪れた時のワクワク感はみんな持っているみたいだから、「春が来ると上古町には春山登山があるよね」というふうになるといいな、と思っています。

「春山登山」は、「まちのために」と始めたことではないんですが、アートだけでなくまちの面白さを知ってもらうイベントにもなっています。そういうふうに、上古町商店街、そして新潟のまちを拠点にして創作活動をしていくことが、自然と“まちづくり”と呼ばれる活動にもなってきたのだと思います。

「春山登山 2011」のチラシ
「春山登山 2012」での展示風景(撮影:内藤雅子)

クリエイターが、まちを活動の拠点にするということ

まちを拠点として活動することがクリエイターとしての可能性を拡大し、その活動が自然と“まちづくり”と呼ばれるエリアのプロデュースにつながってきたという迫さん。

ヒッコリーでは、2012年だけでも、アーティストの中村政人さんが代表を務める「わわプロジェクト」と共同で、東日本大震災後の表現活動を紹介する「東日本大震災復興支援『つくることが生きること』にいがたワークバザール2012」を開催したり、「シビックプライド会議新潟」を開催する等、商店街とまちを舞台にした様々なアート系のイベントを展開し、まちに新たな風を吹き込んでいます。

こうしたクリエイターとまちづくりの関係について、迫さんはどのように考えているのでしょうか。

にいがたワークバザール2012」のチラシ
「カミフルチャンネル」番外編として発行された「にいがたワークバザール2012」のチラシ(部分)

いわゆるまちづくりというよりは、ヒッコリーから始まる様々なバリエーションとして、いろんな活動が起きているんですが、新潟ワークバザールもシビックプライド会議も、最近は本当にいい仕事ができていると思っています。

僕はこのまちにお世話になったということもあるし、好きだからということもあるし、何とかする甲斐がある場所だと思っているし、もっとやれると思っているんです。

そういう場所と、僕みたいなクリエイターのような人間との出会いは、もっと多くなっていくといいと思います。地方都市には、まちに拠点を置いて活動するクリエイターやデザイナーの活躍する余地が沢山あると思うんです。

クリエイターのような人間にとって魅力的なまちは、自由度と寛容性の高いまちです。上古町商店街では、会長さんが出店を認めてくれたことをはじめ、専務理事の酒井さんが会議や勉強会に声をかけたり、僕らの提案を受け入れてくれたり、それを実現するために奔走してくれたりしました。一緒に新しいことをやろうと声をかけてくれる環境であることには本当に感謝しています。

酒井さんと打ち合わせをする迫さん
上古町商店街振興組合専務理事の酒井さんと打ち合わせをする迫さん

クリエイターが若い内から地方に身を置くと、技術はそんなに磨けないかもしれないけれど、チャレンジする余地は沢山生まれてくるはずです。商店街も、そういうクリエイターをとりあえず受け入れてみる、ということをやってみると面白いと思います。

100年続く会社は1%もないけど、まちは何百年も続いているところが沢山ある。自分のお店は何十年かで終わるかもしれないけど、まちは続いていく。そのなかで舵取りをして方向付けていくことに関わっていくのはやっぱりすごく面白いんです。

登録日 2013年3月26日(火曜)00:00

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