コラム・事例紹介

「古いからこそ面白い」築100年を目指すビンテージビルの取り組み(後編)
株式会社スペースRデザイン 吉原 勝己さん

「古いビルから新しいライフスタイルを提供する」とお考えなんですね。

 これまでの経験から、このプロジェクトが単なる建物の改装ではなく、新しいライフスタイルの提供である、ということがわかってきました。
 これは、社会的な意味からも日本のスタンダードになるのではないかと思っています。そしてその情報を発信していくために、NPO法人福岡ビルストック研究会を2006年に立ち上げました。
 市民向けの啓発活動をメインに、2014年からは「福岡DIYリノベWEEK」というイベントを始めました。これは福岡県内各地域のチームが共同で企画するツーリズムイベントです。DIYによるリノベーションが施された建物とエリアをまち歩きしたり、DIYイベントを行ったりするもので、参加者は毎回800人を超え、まちづくりの広報的役割を担っています。
 一つのまちに留まらず、他のまちの仲間達と切磋琢磨し合えることは非常に刺激になりますし、やってきたことで、他のまちにも影響を与えられる喜びを共有し合いながら活動しています。

福岡DIYリノベWEEK

福岡県内各地での取り組みをツーリズムイベントという形で紹介する「福岡DIYリノベWEEK」は、さらに発展して「九州DIYリノベMONTH」に進化している

 また、2008年には株式会社スペースRデザインを立ち上げました。
 当時、セミナーの講師を引き受けることが多くなってきたのですが、古いビルを先代から譲り受けて対処に困っている同じような境遇のビルオーナーが、かなり多いことに気が付きました。そこで、ビル再生のプロデュース会社を設立することになりました。スペースRデザインは、全国で30棟ほどのビル再生のサポート事業を展開してきました。創業10年目に入り、今後は新しいスタイルのビル再生事業への準備も整い、これからいよいよ活躍できる会社になるのではないかと期待しています。

 2017年には、福岡県久留米市にある団地「コーポ江戸屋敷」の再生がスタートしました。
 もともと久留米のある筑後地方は母の出身地だったので、ある程度、街の状況は理解していたつもりでしたが、想像とは全く違っていたのです。
 リノベーションをやってもやっても入居が一向に決まらない日々が続きました。なにせ家賃が月額6万円を超えると、新築一戸建てが建てられるような街です。いいものを作っても簡単には認知されないので、とにかく自分たちの手で地道に広めていかなければなりません。
 時間は掛かりましたが、最近になってようやく情報が広まりだし、入居が決まり始めました。
 同じ県内の街でも、それぞれの街の本質的な違いのあることは分かりましたが、ライフスタイルの変化は必ず起こせるはずだと感じています。今は我慢のしどころですが、このハードルを乗り越えることで、様々な街で事業を展開できるのではないかと思います。

江戸屋敷

「コーポ江戸屋敷」の一角には建築関係の職人たちによるシェアオフィスがあり、オフィスのベランダにはパーゴラが設置されている

「古いビルを再生することの面白さ」ということですね。最後にこれからの取組についてもお聞かせください。

 古いビルを再生することの面白さは、逆説的ですが、欠点があることだと思います。新築の設計は当初のプランが決まってしまえば、所有者はそのデザインに乗っていくしかありません。行き当たりばったりなところもありますが、むしろそれは建物が生きている証しです。子供と同じで、たまに悪さもするが、その成長の過程で想像すらできなかった結果を出すこともあります。その面白さを、全国の古いビルの所有者に知ってほしいものです。

 この事業は、単なる中小企業の一事業ではないとも感じています。もしかしたら、これからの日本に必要とされる産業になっていくのではないでしょうか。衰退していく地域社会に対する解決策として、今、手掛けている事業は最先端に位置しているように思います。

 古いビルを先代から譲り受け、自分のビルにも関わらず好きになれずにいたオーナーも、再生の手を入れることで愛情を持てる素敵なビンテージビルに蘇らせることができます。
 人が集まってそこに色々な思いや気が流れ始めていくことは、建物を再生する過程の中に、人々の物語を詰め込むことだと思います。新築にはない面白さこそ、プロデュースの妙です。
 古いビルは、建築技能を持っていなくても人々が関われる余地がたくさんあります。まちに関わることの出来る、とても開かれた要素だと思います。

 歴史的建造物として都市型集合住宅の象徴だった同潤会アパートがなくなってしまった今、福岡から同潤会を蘇らせたいという気持ちがあります。そして、ビンテージビルのシンボルとして、福岡の冷泉荘から日本の冷泉荘にしなければならないという使命感を持っています。

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関連リンク

株式会社スペースRデザイン
吉原住宅有限会社
NPO法人福岡ビルストック研究会
「古いからこそ面白い」築100年を目指すビンテージビルの取り組み(前編)

登録日 2019年3月26日(火曜)00:00

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