コラム・事例紹介

第50回 まちづくりコラム 「コミュニティデザインでまちを元気に」その1 山崎 亮

山崎亮

山崎 亮(やまざき・りょう)

コミュニティデザイナー/studio-L代表/京都造形芸術大学教授
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学農学部卒業(緑地計画工学専攻)。メルボルン工科大学環境デザイン学部(ランドスケープアーキテクチュア専攻)留学、大阪府立大学大学院(地域生態工学専攻)修了。SEN環境計画室を経て2005年にstudio-L設立。現在、京都造形芸術大学教授。 主な著書に、『コミュニティデザイン(学芸出版社)』、『ランドスケープデザインの歴史(学芸出版社、編著)』、『震災のためにデザ インは何が可能か(NTT出版/共著)』など。(顔写真撮影:勝見一平)

コミュニティデザイン=「人のつながり」をデザインすることで、離島から大都市に至るまで、まちとそこに住む人たちを元気にしているコミュニティデザイナーの山崎亮さん。鹿児島では大手百貨店が撤退した後の商業施設の各階に地元のコミュニティ活動団体の拠点を導入し、大いに賑わう「買い物集会所」として生まれ変わらせました。山崎さんに、コミュニティデザインとは何か、どのように進めればいいのかについて、ご紹介いただきました。

ハードのデザインから、ソフトのデザインへ

ぼくは、当初「ランドスケープデザイナー」として公園などの設計をしていました。それが現在は、ハードのデザインではなく、コミュニティというソフトのデザインをする「コミュニティデザイナー」を名乗っています。

ここでいう「コミュニティデザイン」というのは、「良質な人のつながり」をつくること、地域の人が地域の課題を自分たちで解決するために、「人がつながる仕組み」を設計することです。

ハードのデザインからソフトのデザインへと移っていく直接のきっかけになったのは、兵庫県三田市にある「兵庫県立有馬富士公園」で市民参加型のパークマネジメントに関わったことです。

公園の運営というのはなかなか難しく、自治体がいくら立派な公園をつくっても、来園者は開園後をピークに減少してしまいます。公園をデザインする立場から見ると、本当によいものは人々が愛着をもってずっと使い続けるはずだから、来園者が減少するのはデザインが甘かったからだ、と反省をすることになります。

でも、それだけでもないことに気づきました。ハードのデザインももちろん大事ですが、利用者がそこで何をやるのかがすごく大事だと思うようになったんです。そこで、常に新しいことが起きる場所にしたいと考え、最初は、公園管理のコーディネーターがイベントを企画することを提案しました。でも、行政の人からは「そんな予算はない」と。確かにその通りでした。

そこで、プロが行うイベントではなく、地域で活動しているNPOやサークルに、来園者を楽しませるプログラムの実施をお願いし、公園の各所で活発な活動が始まりました。

有馬富士公園、水辺の生き物観察会の風景
有馬富士公園、
水辺の生き物観察会の風景

たとえば凧揚げとか、お茶会とか、生き物の観察会といった活動です。それらの活動を通して各団体のファンを増やしていきました。各団体には、メーリングリストや名簿に登録しているファンが約100人~1000人います。その2割の人がイベントの度に公園に来てくれる。活動の団体数が増えるか活動の頻度が上がれば来園者数はどんどん伸びていくことが分かりました。

ハードのデザインだけでなく、ソフトをマネジメントするという視点を組み合わせることによって、持続的に楽しめる公園をつくりだすことができることを実感しました。

コミュニティをデザインする=人がつながる仕組みをつくる

コミュニティには、2つの種類があります。ひとつは、町会、自治会のように土地でつながる「地縁型」のコミュニティ。もうひとつは、共通の興味や趣味などでつながる「テーマ型」のコミュニティです。

コミュニティの変遷を歴史的に見ると、戦後、都市と農村の人口が逆転するという圧倒的な変化が起こっています。昭和20年まで8割だった農村人口は、現在では2割にまで減少し、大半の人が都市に住むようになりました。

そこで、それまでの農村で培われたつながりを都会に持ち込もうと、都市にも自治会のようなかたちでコミュニティがつくられました。しかし、たとえば東京では現在、自治会への加入率は6割だと優秀なほうで、4割というところも珍しくありません。

都会のマンションでは、隣人の顔も知らず、わずか20cmの壁を隔てた隣の部屋で孤独死が起こるというのは尋常ではない社会です。東日本大震災後、特に人がつながることの重要さが明らかになったと思っています。

コミュニティには、まちを元気にする力があります。たとえば、まちの祭りや寄り合い、道端での夕涼みなどを思い浮かべてもらうと、そこには「人と人が結びつくこと」で生まれる楽しさがあったと思います。

とはいえ、希薄になった地縁型コミュニティを昔のままに復活させることは、あまり現実的ではないのではないでしょうか。

有馬富士公園に人を呼び込んだのは、テーマ型コミュニティの活動でした。

テーマ型のコミュニティを地域で育てることで、疲弊した地縁型コミュニティを活性化させたり、テーマ型と地縁型のコミュニティが一緒に何かをしたりすることで、その場所に人が集まるようになる。この2つのコミュニティをどう接続し、「人がつながる仕組み」をつくっていくかが、コミュニティデザインにとって大切なことです。

テーマ型コミュニティの力で百貨店を生まれ変わらせる

マルヤガーデンズのガーデンで行われるコミュニティの活動
マルヤガーデンズのガーデンで行われる
コミュニティの活動

有馬富士公園での仕事をきっかけに実感したコミュニティの力を、中心市街地の商業施設に取り込んだのが鹿児島市の百貨店「マルヤガーデンズ」です。

マルヤガーデンズの全10フロアの各階には、飲食や物販などの店舗と並んで「ガーデン」と呼ばれる地域のNPOやサークルの活動場所となるスペースがあり、アーティストの作品展や写真展をはじめ、地産地消型の料理教室や不登校児が育てた野菜の販売、コミュニティシネマといったプログラムが実施されています。

マルヤガーデンズは、かつて地元百貨店の丸屋デパートが三越との提携により鹿児島三越となっていましたが、三越の撤退によって再び丸屋デパートとしてリニューアルオープンしたものです。デパート全体のアートディレクションを担当していた方からコミュニティデザイナーとしてプロジェクトに関わってほしいという依頼をいただきました。

その時に有馬富士公園を思い出し、市内で活動しているコミュニティを「マルヤガーデンズ」に呼び込むことにしました。人口 65万人の鹿児島市の中心市街地ですから100団体は堅いし成功する可能性は高いとみたのです。

そこでマルヤガーデンズの社長に、コミュニティが活動できる「ガーデン」をつくってくださいとお願いしました。インターネットや郊外のアウトレットで買えてしまうブランドでは集客に繋がりませんが、100の活動団体がガーデンを使って活動を展開すると、そこで集まる人たちが帰りに何か買っていってくれて、普段デパートに来ない層を呼び込むことができますよと。

マルヤガーデンズの見取り図と活動
マルヤガーデンズの見取り図と活動

開店してみると、テナントとコミュニティ同士の相互関係も生まれました。たとえば、エコな生活を推進する団体が企画した展示販売会の商品を、その後常設店舗で販売するといった連鎖が起こっています。

中心市街地の百貨店という商業空間に、パブリックな場所をつくり、コミュニティの活動を入れることで、テナント、コミュニティ、お客さん、そしてまちをつなげていくことができました。

ハードのデザインの前にコミュニティデザインを

延岡駅周辺整備事業は、建物設計の前段階でマネジメントを提案するという関わり方をさせていただいています。当初は、JR九州の駅舎、延岡市の駅前広場とその横に民間のビルを同時に開発するので、その3つの「デザイン監修」について相談されました。

しかし、単に駅舎や広場がリニューアルされれば人が集まる時代ではないので、まずは駅周辺のエリアマネジメントを提案したのです。3つの施設だけでなく、周辺の空き店舗や神社などで市民参加型のイベントをやった方がよいのではないかと思ったからです。

ハードのデザインは他にやれる方がたくさんいるので、ぼくたちが関わるのならば、その仕組みをつくりたいということを市の担当者にお伝えしました。それで、ハードのデザインの前に、まずはコミュニティデザインをやらせていただくことになりました。

現在は、プロポーザルでデザイン監修に選ばれた建築家の方と一緒にワークショップをやったりしていますが、デザインを決めていく過程で、NPOや市民団体など100団体に、駅前で何をやりたいかをヒアリングしています。

たとえば、民間の建物の中にマルヤガーデンズのようなものをつくるのか、バルコニーを舞台のようにして広場から見えるようにするか等、コミュニティがやりたいことを伺って、どのように使われる空間をつくるとよいかを調整しています。ハードだけつくっても誰も使わないと意味がないですからね。

商店街を再開発する時に莫大な費用をかけて立派なものをつくるより、その消費税分くらいはソフトにお金を使った方がいいと思います。少し建物の仕様を落としたとしても、中が盛り上がっているほうが楽しいまちになるからです。

ソフトにお金をかけることで、結果がどれだけ違うのかということをどんどん発信していく役目がぼくたちにはあると思っています。設計料や広告費などは世の中ですでに当たり前に認められ、仕事として確立していますが、コミュニティデザインはまだまだです。

それができる人材を育てていくためにも、きちんと職能として定着させ、理解してもらう必要があります。

延岡のような再開発事業をやる時は、構造や設備設計と同じように、コミュニティデザインがあることを当たり前にしたいものです。そうすれば、ハードとソフトの関係はもっとよくなっていくと思います。

その2に続きます

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関連リンク

studio-L
京都造形芸術大学

登録日 2011年8月10日(水曜)00:00

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