研修・セミナー

第3回 まちづくりオープン会議 まちづくりを仕事にする~タウンマネージャー・まちづくり会社の仕事~(後編)~

まちづくりを志す人へのメッセージ

映像(チャプター5)を見る

タウンマネージャーは「まちを売るセールスマン」。営業や企画の経験を

石原 「まちづくりの仕事に就きたいけれども、きっかけがない」という方は多い。まちづくりの仕事に関心をお持ちの方へのメッセージをうかがいたい。

府中市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー・原田弘子さん
府中市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー・原田弘子さん

原田 難しいテーマだが、一番大事なのはコミュニケーション能力だと思う。

何かの専門知識が必要というより、人の話をちゃんと聞いて、その人が何を求めているかを想像する力があれば、タウンマネージャーはつとまる。

結局は「まちを売る」ということを不特定多数の人に繰り返していくのがタウンマネージャー。まちのいいところを探して、「このまちってこんなにすごい」ということをアピールする「まちを売るセールスマン」のようなもの。

そのために準備するのであれば、セールスや企画の仕事に就かれることをお勧めしたい。

石原 人の話を聞いた後に、事業を組み立てる力はいらないか。

原田 どこのまちへ行っても、タウンマネージャーは事業予算をたくさん持っていない。そのため、誰かにお金を出してもらって、誰かのノウハウと誰かの労力をもらって事業を実現していくことになるので、人と人、リソースを組み合わせる力は必要かもしれない。

家族や子どもが幸せに暮らしていけるようなまちに

多治見まちづくり株式会社 事業課長・小口英二さん
多治見まちづくり株式会社 事業課長・小口英二さん

小口 自分の家族や子どもがこれからもこのまちで幸せに暮らしていけるように事業や会社運営に取り組むことが、まちづくりの仕事をしていくうえで一番大事なことだと思っている。 そして、まちのみんながそう思えるように「みんなでまちのことを考えていく空気」を先頭に立って作っていくことが自分たちの仕事だと思う。

若いうちは地元の方に便利に使われたり、自分が納得していないことでも頭を下げて回ったりということもあるが、本来の目的だけは見失わずに経験を積んでいくことが大事だと思っている。

街元気の研修をはじめ、他のまちづくりの事例を参考にするためにいろんな都市を訪れると、人とのつながりができていく。facebookなどを通じてネットワークを広げることができるし、まちづくりの仕事もどんどん面白くなっていくだろう。

アンテナを高く張っている人に

石原 朝野さんのように、タウンマネージャーを受け入れる側から「こういう人に来て欲しい」ということはあるか。

府中市中心市街地活性化協議会事務局・朝野弘行さん
府中市中心市街地活性化協議会事務局・朝野弘行さん

朝野 原田さんはすごくアンテナを高く張っている。補助金のこともよく知っているし、地元の方の声もよく聞いていて、その中から事業化の芽を拾って伸ばす。

何にでも興味を持つ、アンテナを高く張るということがタウンマネージャーとして必要だと思う。

20代の人はこれからずっと同じまちに住むのであれば、これから50年、60年、そこに住むことになる。若い方には、将来自分が住むまちのことを自分たちで考えるために、ぜひまちづくりに参加してもらいたい。

まちづくりが仕事になる環境をつくっていきたい

青森市新町商店街振興組合 副理事長・加藤博さん
青森市新町商店街振興組合 副理事長・加藤博さん

加藤 昔は事業を起こす時、「ヒト、モノ、カネ」と言った。いまはそれに「情報」が加わる。情報を持っている人、情報を出している人に、情報は集まってくる。アンテナを張るというのは、自分もよく情報を出しているということ。

ソフト事業でもハード事業でも、まちづくりをやって10のうち1つでも自分の思い通りになって、自分の考え方一つでまちが変わることを実感した時に、この上ない喜びと、こんなに素晴らしい仕事はないと感じる。

これからの若い人が、まちづくりの仕事を、就職先の一つとして考えることができるような環境を、私たちが残していかなければいけない。

仕事としてのタウンマネージャー

映像(チャプター6)を見る

タウンマネージャーの報酬は?

石原 楽しい仕事でも、それに見合うような報酬がないことにはやっていけない。これはまちづくりの仕事にとって避けて通れない問題。原田さん、小口さんに、実際のところはどうなっているかうかがいたい。

多治見まちづくり株式会社 事業課長・小口英二さん
多治見まちづくり株式会社 事業課長・小口英二さん

小口 私が多治見に着任した当初、とりあえず1年半の予算はあったが、その後は見えない状態だった。

商店街や地元の方からも「どうせ1、2年でどっか行くんだろう」と言われたり、「何年いてくれるの?」と聞かれたりすることもあった。自分の人件費を予算として保障できていなかったので、「何年います」と答えられなかったが、働く以上は安心して働けるようでなければいけない。

今は部下も少しずつ増えているので、私の仕事ぶりや暮らしぶりを見ている部下が「小口のような暮らしがしたい」と憧れを持ってもらえるようでなければいけないと思う。そういうことも含めて稼げるようになりたい。

原田 私は常にプロでありたいと思っているので、相応の対価をいただかない限りはやらないでおこうと決めている。1日あたりの単価にすると金額的にもしっかりもらっていると思う。

とはいえ、府中で200日や300日稼働できるわけではなく、年間でトータルすると波がある。そのため、府中の仕事をしつつ他の仕事もすることで、全体的な収入のバランスをとっている。

タウンマネージャーが貧乏で苦労しているようだと誰も付いてきてくれなくなる。多少懐が寂しくても「すごく稼いでいますよ」という振りをすることにはしている。

補助金がなくてもやっていける体制づくりを

石原 タウンマネージャーをお迎えする側の朝野さんに、まちが良くなったとして、それに見合っただけの感謝の気持ちをかたちにできるか、うかがいたい。

府中市中心市街地活性化協議会事務局・朝野弘行さん
府中市中心市街地活性化協議会事務局・朝野弘行さん

朝野 補助金等を活用してタウンマネージャーに来ていただいていると、補助金が切れる際に「これ以上はもう雇えない」となるか、「日数を減らしてでも来て欲しい」となるか、判断しなければならない。欲を言えば、補助金がなくてもやっていけるような体制を作らないといけない。

一般論として、タウンマネージャーの働きによってまちが変わっていったことが目に見えて、市民も「雇うのが当然だ」と思えるような仕事をしていただければ、それに見合う報酬というのは当然出てくると思う。

石原 結果として良くなれば理解してもらえるが、スタートの時点で「3年経ったら良くなるからお金を出せ」と言って信用できるかという問題はある。

加藤 金の切れ目が縁の切れ目にならないようにやらなければいけないが、一生懸命やってそれなりの評価を得た人は次のまちから誘いが来る。アドバイザー派遣などに呼ばれて仕事もできる。

行政との連携について

石原 「行政主導のまちづくり」というイメージは根強い。行政との付き合い方や、行政への期待や希望についてうかがいたい。

府中市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー・原田弘子さん
府中市中心市街地活性化協議会タウンマネージャー・原田弘子さん

原田 中心市街地活性化についての意思決定者は市長だと思っている。市の考えと、商工会議所の産業政策があって、その方針を実現していくのがタウンマネージャー。

行政も産業界もあわせてまちの人たちが「こうしたい」という打ち出しがない限り、お手伝いのしようがない。

府中は市も産業界も方針がはっきりしていて、それぞれの役割分担のなかで示された方向性を実現するのが私という位置づけ。とてもいい関係で進んでいる。

小口 多治見では、行政には大株主という形で関わっていただいている。市が決めた方針に従って事業を起こしていくのが会社の方針なので、行政とは常にタッグを組んでやっていきたい。

朝野 全体のグランドデザインを描くのはやはり行政の役割。そのグランドデザインにもとづいて、どう実現していくかがタウンマネージャーの大きな仕事だが、民間から出てきた「こういうことがやりたい」という動きのお手伝いをして、まちづくりに関わる人を増やしていくのも大きな仕事だと思う。

青森市新町商店街振興組合 副理事長・加藤博さん
青森市新町商店街振興組合 副理事長・加藤博さん

加藤 行政、商工会議所、NPO、どこのまちづくり機関でも必ず実務者がいる。そういう人たちとの連携のための調整役・パイプ役であることを強く意識している。青森では毎週、私の会社の2階の会議室で、中心市街地活性化協議会や行政の実務者が集まって会議をしている。そうした場を持つと自由に議論ができるし、アイデアも出てくる。

選挙でコロッと政策が変わったりすることがあるが、都市政策、都市計画は簡単に変えられるものではない。実務者とパイプをよくしておくと、どのような変化があっても実行につながっていくと思う。

タウンマネージャーの役割は、まちによっても人によっても違う

コーディネーターの流通科学大学特別教授・石原武政さん
コーディネーターの流通科学大学特別教授・石原武政さん

石原 行政との付き合いも含め、人と人とのつながり、地域の中だけでなく外の人とのつながりも通して様々な情報を集め、まちを動かしていくというのが、みなさんのまちづくりの仕事に共通していることだと思う。

まちづくりにはいろんなパターンがある。「ハードはやらないほうがいい」という人もいれば、「形を作らないとできないじゃないか」という人もいる。「人もいる」というより「まちもある」というほうが正確だろう。

タウンマネージャーの役割もまちによって違って当然だし、人によって個性があって当然。人と人との出会いを面白がり楽しみながら、当初から予定されていたのではない新しい方向ができたり、事業が生まれたりということを一緒になって作っていけるような人、それがタウンマネージャーではないか。

1日行って帰ってくる専門家の派遣とは違った役割として、本当のタウンマネージャーというのはそこに住み着いて、地域の人のつながりを動かしていく仕事だと改めて強く感じる。

質疑応答

映像(チャプター7)を見る

なぜ、まちづくり“会社”がまちづくりを行うのか

質問 “会社”としてまちづくりをする利点は何なのか。

小口 会社組織の利点は、個人が何かやって失敗しても全責任がその個人に帰せられないこと、また、スタート時にしっかりお金が使える状態であること。また、多治見のような会社では行政のバックアップがあるため公的に動きやすく、いろんな組織の代表の方に役員になってもらっているので、意思決定がしやすいこともある。

加藤 20年くらい前まで、商店街が元気な頃は商店街振興組合がまちづくりをやっていた。ところが商店街振興組合の力がどんどんなくなって、商店街振興組合だけではやれなくなったという経緯がある。

今、中心市街地活性化のために、多くのまちづくり会社が設立されている。その中でも多いのが第三セクターといって、行政がかなりの出資金や毎年の予算をつけて、商工会議所が人件費を持ったり、一般企業からも出向があったりするというかたち。

それ以外にもNPOや、不動産再開発をする普通の民間会社がまちづくり会社として第三セクターになって指定管理団体として事業委託を受けたりすることもある。組織形態は違っても、まちを良くしていくためにこれからはまちづくり会社が必要になってくる。

石原 まちを良くする事業を誰がするかと言えば、一つは行政。もちろん行政は大事だが、公平性の問題をめぐって、あるいは意思決定が遅いことから、動きの取りにくい面もある。それを動きやすくするというのもまちづくり会社の一つの目的。

商店街は重要な役割を果たしてきたが、最近のまちづくりは、商店街の商業活動を超えて福祉にも広がり、人の暮らし全般に広がるところを射程に入れながら、それぞれの地域でこちらに重点があったりあちらに重点があったり、取り組みの濃淡があると思う。

地域の若者をまちづくりの担い手に育てるには

質問 まちづくりを一生懸命やる人というのは外部の人が多いという印象がある。地域で暮らしている若い人がまちづくりに関わっていて、同時にまちづくり会社で働きたいと思うきっかけづくりとしてはどういう点が重要なのか。

原田 府中の場合、地元の人たちも参画されるようになっている。

大事なのは「旗をあげる」ことだと思う。楽しそうなこと、面白そうなことをいっぱいやって、それがどこでやっているのかはっきりすれば、旗のもとに人は集まってくる。

その中には「イベントが面白そうだからスタッフをやりたい」という人もいれば、「まちのために何かしたい」という人も混じっていて濃淡がある。いろんな人を惹きつける事業を行ってマスコミにも登場し、その人たちを吸引できるような仕組みをつくることが重要。

小口 多治見の場合、まちづくり会社があって、こういう仕事があることが知られていなかった。私が来たり、社長が替わったり、事業が起こってくると注目されるようになって、「こういうことなら一緒にやりたい」という声が出て、今は地元出身の社員もいる。

石原 事業をする、見せることによって、関心を持ってくれる人がつながっていくということなのだろう。

先程のまちづくり会社の質問と関連させれば、組織そのものより、働きかけが大事なのだと思う。

タウンマネージャーの役割というのは、以前は商店街が担っていたところもあれば、商工会議所が担っていたところもあって、地域によって様々ある中で、まちを大きく動かしてきたと思う。

しかし、商店街からも、商工会議所からも、役所からも、地方銀行からもそうした役割の担い手が育っていない地域で「でもなんかしたいよね」という動きが、専門家としてのタウンマネージャーの受け入れを呼び込んでいるのかもしれない。

そうだとすると、外から呼ばれたタウンマネージャーにとって重要な役割は、そのまちの中から担い手を育てていくことになるだろう。

加藤 まちづくりは一人では絶対できない。中心になるリーダーには「フォロワー層」といって支える人が何人もついている。商店街でも同じ。事業別にそれぞれ担当を決めてやっている人たちもいっぱいいる。

ディスカッションを振り返って

映像(チャプター8)を見る

まちと関わる接点を増やしていこう

石原 ディスカッションを振り返って、最後に一言ずつコメントをいただきたい。

小口 まちづくりを目指したいという人がこれからも増えてくると、日本全国良くなっていくと思う。「仕事」として多治見でこういうことをやっていると胸を張れるようやっていきたい。

朝野 まちづくりは、各都市でまったく同じことをすることはない。それぞれのまちの特性を活かして、自分たちに何ができるかということをよく考えて、仲間を集めて行動すれば、少しでも前へ進んでいけると思う。ぜひ若い方はまちづくりに積極的に参加していただきたい。

原田 まちづくりの仕事は、同じことは二度と起こらないし、いろんな人たちが動くので、すごくダイナミックで面白い。

ただ、なかなかその入口が見つからないこともある。その時は、最初から「まちづくりをしよう」と思うのではなく、自分がやりたいことをやった結果、まちのプラスにつながる、というアプローチで探していくのもいい。

まちづくりだけでなく、まちに関わる接点をたくさん広げていただけるといいと思う。

加藤 タウンマネージャーやまちづくりの仕事は、自分自身を成長させて仕事ができる、本当に類稀ないい仕事だ。

石原 みなさん楽しんでおられることを実感できてよかった。「蔵が建つ」ような収入の良い仕事ではないけれども、人とのつながりを深めながら、自分たちが住んでいるまちに関わることによって、まちが良くなっていく、動いていくという実感が持てる。しんどいことも一つずつ具体的に乗り越えていくことで、また喜びが出てくる、そんな仕事なのかなと思う。

チャプター5

チャプター6

チャプター7

チャプター8

登録日 2012年3月07日(水曜)15:30

ログイン

新規会員登録はこちら

メールマガジン配信内容募集中

マチイベ!(街のイベント)募集

-中心市街地活性化-まちづくり-サイト内検索

-中心市街地活性化-まちづくり-もっと詳しく検索する

好きなまちで挑戦し続ける

街元気パンフレット

街元気サイトツイッター

街元気facebook

  • -中心市街地活性化-まちづくり-経済産業省
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中小企業基盤整備機構
  • -中心市街地活性化-まちづくり-全国商店街支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-中心市街地活性化協議会 支援センター
  • -中心市街地活性化-まちづくり-J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト