コラム・事例紹介

青森市中心商店街女性部 伊香佳子「女性ならではの利用者目線が導く“まちにあってほしいモノ・コト”への道」(後編)

伊香 佳子(いこう・よしこ) 青森県青森市

青森市中心商店街女性部 事務局長
青森市新町商店街振興組合理事・広報委員長・青年部監事/同一店逸品運動ワーキング部会長
青森市生まれ。慶應義塾大学卒業、東京で大手電機メーカー勤務後、青森市中心商店街にて3代(80年)続く、実家の電器店の店頭に立ち、お客様と接している。ねぶた囃子が響くとじっとしていられない生粋の青森人。業務の傍ら、個店力アップに向け新町商店街が2003年から取り組む「一店逸品運動」推進の中心役も務め、評判の「逸品お店回りツアー」ガイドとして、日々いそしむまち歩きと、まちの良さ発見で培った人のつながりを、さらなる活性化に生かす。一児の母。

 

モノだけでなく、話題・物語を提供する

市民参加型コンテストに入賞し、イベント時に限定販売されるアップルパイ
市民参加型コンテストに入賞し、イベント時に限定販売されるアップルパイ

さて、コンテストの優勝賞品としてイベント限定で販売するようになったアップルパイは、女性部参加イベントの名物となり、「青森市中心商店街女性部といえばアップルパイ」というイメージがまちに定着するようになりました。

そしてある日、その評判を聞いた観光関係の方から、「このパイをお土産として商品化するために量産型にできないか」という打診を受けました。

これを聞いて私たちは違和感を覚えました。

私たちが大事にしたい「青森りんごのアップルパイ」は、観光地でありがちな、名前だけ変えて真空パックの中身はそっくり、のような効率と利益追求のものではありません。「青森だからこそ」「青森ならでは」のものです。

ならば、商品化のネックである「量産ができない」ということは逆に問題ではない、ということに気づきました。

青森市中心商店街にいる者にとって、「青森のお土産になるモノ」を見出すばかりではなく、このまちに来ていただいたからこその「土産話になる」話題を提供でき、「青森駅周辺でしか手に入らない焼き立てアップルパイを食べに、また行きたい」「すごいアップルパイがあるらしいから、一度行ってみよう」と言ってもらうことができたら、それは素晴らしいことではないかと思ったのです。

 

アップルパイを名物にするためのあと一歩

地場産品であるりんごを生かした一般市民のすごワザが、まちなかでの小さな起業につながり、まちで誇れるメニューの1つになる。それは商店街女性部である私たちならではの知識と経験を生かして仕掛けられる、市民と連携した、とても素敵なまちの活性化なのではないか──

ではこの「おいしい手作りアップルパイ」を、イベント時の特別販売ではなく、数量限定であっても「青森の中心商店街に行ったら手に入る名物」にするにはどうしたらいいか。

しかし私たちには、それぞれのお店が、業務があります。アップルパイによる起業と活性化に、そう多くの時間を割くことができないのが実情です。

そこである日、新幹線開業イベント関連の連絡会議で、様々なジャンルの担当者が一堂に会したフリートークの終了間際、間口を広くタネを蒔いてみました。

「中心商店街女性部では、絶対に青森の自慢になる手作りアップルパイを時間をかけて育ててきました。ただ、あと少し、これをどうやって正規デビューの道にのせたらいいか悩んでいます。商店街で店頭に立ち、月会費500円で部を運営する私たちに、大きな仕掛けや大袈裟な方法は難しい。大きな維持経費が継続してかかるのも困ります。そんな環境のなかですが、何かちょっとしたことでも、こんなのどうだ、というヒントでも、思いつかれたらいつでもお教えください。よろしくお願いします」

そしてタネは芽を出しました。この会議からしばらくたったある日。市の農林水産部門担当者から、経費も最低限のとてもいいアイデアがある、とお電話をいただいたのです。

 

新たな“青森名物”の製造販売拠点「まちなか工房 林檎倶楽部」始動!

市の方からの提案は、まちの中心部に、水回りがある程度整ってずっと空いている小さなスペースがあるから、わずかな経費と使用料で貸してもらえるよう、一緒に相談に行ってみてあげようという、本当に願ってもないお話でした。

私たちは早速ご一緒して現場を見、現実的にイメージしながら検討を始め、条件に沿ったさらに最適な空き店舗を中心商店街で見つけることになりました。

そして、自分たちの活動資金の範囲で実施できるよう事業を構築、助成申請にこぎつけました。そんな時のために集めておいた様々な必要物品や資料を活かし、積算した費用は、助成を含めて全体でも驚くほどわずかで済ませました。

こうして手作りアップルパイを青森の新しい名物とするための、製造と販売の拠点が完成し、私たちは女性部発足以来の夢を、自分たちの手でさらに大きく広げる道を一歩踏み出しました。

まちなか工房 林檎倶楽部の外観
まちなか工房 林檎倶楽部の外観

それが今年の春にオープンした、「まちなか工房 林檎倶楽部」です。

ここはパイづくりとその販売拠点となるだけでなく、たとえば地産地消レストランを開くこともできますし、地場産品惣菜をつくって販売するための拠点にもできるようになっています。

工房の披露イベントとして企画した「アップルパイ教室」では、15名の募集定員に対して、即日60名もの市民から申し込みいただく大盛況。急遽開催回数を増やして実施しました。

そして4月。まちから歩いて5分ほどの中央埠頭に、約7万トン、乗客定員1800名の大型豪華客船が寄港。連絡会議で市の担当者から、商店街で何かおもてなし企画がないか問われた時、女性部は迷わず手を挙げることができました。「土産話にできるアップルパイ」はいかがでしょうか、と。

アップルパイ手作り体験をしたら、焼ける間の時間を利用して近所にある地元の魚菜市場をボランティアガイドさんがご案内。その後アップルティーと一緒に焼き立てを食べていただく1時間のツアー仕立て。

そのおいしさは当日参加の約20名に通用し、「ワンダホー!」と大絶賛でした。私たちは通訳さんを通じて「このパイは、青森りんごを使っているからこそおいしい」とアピール。青森に居ながらにして“世界発信”です。

外国人によるアップルパイの試作体験中の様子
外国人によるアップルパイの試作体験中の様子
アップルパイを焼いている間に市場見学
アップルパイを焼いている間に市場見学

この6月にはアップルパイの本場とも言えるドイツからの寄港客に、やはり市の依頼で同様のサービス。これまた前回を上回るほどの大好評、用意したレシピの翻訳まで頼まれました。

 

青森市中心商店街女性部の今を支えるもの

ここまでこられた私たちの結束を支えているのは、“歩ける範囲でつながっている商店街なのに「道を渡った向こう側は違う商店街なのでわかりません」とか「隣の商店街なのでイベントは知りません」というのはないよね”という、言ってみれば「普通の感覚」。

独立団体として「女性としての利用者目線で」「できることをやれるときに自分たちでする」ため、部費やイベント出店など自力で活動資金を調達する体制づくりができていますが、もちろん、部員それぞれは、各自商店街振興組合など正式な組織に属しており、商店街活動や活性化に関する行政その他の様々な情報がきちんと入手できるからこそ、適用可能な補助事業への申請もでき、必要とあらばかなり大きな事業にも取り組んでいます。

一斉清掃をはじめ、初年度から取り組んできた活動はすべて現在まで継続しているのに加えて、まち歩きマップ「おすすめまち案内絵図」や女性部の活動をお知らせするホームページの制作、「りんごと地産地消お弁当コンテスト」や「青森の豊富な冬食材で、目指せ!鍋横綱コンテスト」の開催などなど、ここには書ききれないほど他にも多くの取り組みを実施してきました。

活動に直接参加できない部員にも「動く人を可能な範囲で手伝い、応援してくれる人」「部費負担で活動資金の助けとなり、活性化活動に貢献している人」という大事な位置づけが定着しています。「なかなか時間がなくて参加できないからやめる」などということがないのも、女性たちの集まりとしては珍しいかもしれません。

この礎を築いた初代部長、初代事務局長、そして協力・指導して下さる多くの行政担当者、各種団体・商店街、一緒にやってきた一般の方々。得た繋がりに常に感謝を持って、さらなる発展に向かいます。

 

まちづくりのタネは、「お客様目線」の土壌でこそ育つ

賑わいづくりのために、まちでイベントを開く──どこのまちでもやっていることだと思います。

でもそこで、せっかく自分たちの時間を割いてやるのだから、いろんなことがムダにならないように、次の何かにつながるように考える。

私たちは「こんなことあるといいな」と思ったことを「やれるかたちで」「タネを蒔いて」みます。

きちんと地域に根ざして、ヒトに受け入れられるものでなくては、タネは成長しません。主催者目線のご都合主義ではなく、参加者目線、お客様目線の土壌でこそ、タネは育つと思っています。

まずは、「こうなればいいな」「こういうのがあればいいな」について、できることで動いてみる。

それによって見えてくる様々なモノやヒトに、親しく広くつながりをもつ。

成果は小さくても「何かが、少しでも、よくなるように」。そうして、自然に道が見えてきて、いろんな方々に教えを受け、助けていただきながら、少しずつ進んでいく。そうするとさらにまた、必要な、先の道が見えてきます。

 

「あったらいいな、あるとおもしろいな」をこれからも

そして現在、次に仕掛けようとしているのが「まちなかグリーンツーリズム」とでも言うべき体験型プログラムです。

先に外国客船客に提供したような「青森に来てよかった」と思っていただける観光名物として、また市民が参加しても楽しいかたちで、アップルパイ手作り体験ツアーを育てようと、観光部門と “画策中”です。早ければ今年の秋か冬には実現するかもしれません。

これまで実施してきた様々な取り組みで積み重ねた経験やノウハウのおかげで、この理想形ともいえるかたちの実現には、お金もほとんどかかりません。ヒトも、これまで知りえた人脈でOK。

そんななか、守っていくべき大事なこだわりは忘れません。「青森りんごのおいしい手作りアップルパイ」は、よほどの特別依頼がない限り、りんごのおいしい季節、ほぼ10月からせいぜい4~5月の限定提供が基本。これは、この手作りアップルパイを考案した、コンテスト参加優勝者のこだわりでもあります。

様々な取り組みのなかで見出した旗印。これを記した素敵なピンクのフラッグが、まちの、女性部員のお店にはためいています。

女性部のシンボルマークのフラッグ1 女性部のシンボルマークのフラッグ2
女性部に所属するお店の店頭にはシンボルマークのフラッグがあり、店員の女性はお土産についても道案内についても快く応じてくれる

私たちならではの活性化へのキーワード「林檎のふるさと 青森のやさしさを どうぞたくさんお持ちください」。

さあ、みなさん。ここ青森のまちに来たくなりませんか? 青い空、青い海、おいしい水と食べ物の豊富な青森のまちで、私たちが笑顔でお待ちしています。

 

 

 

登録日 2012年7月06日(金曜)00:00

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