コラム・事例紹介

まちづくりQ&A「地域の食材と人を活かす『食のまちづくり』」~食材のテキスト化とワークショップ~金丸弘美(PART2)

  • 金丸 弘美

    金丸 弘美(かなまる・ひろみ)

    食環境ジャーナリスト、食総合プロデューサー

    執筆活動のほか、食の総合プロデューサーとして、ワークショップのプラニングから、プロモーション、ツアーへの展開、公開授業、幼稚園から大学まで各学校での食の講師などもてがける。執筆活動のテーマは、地域デザイン、食育と味覚ワークショップ、食からの地域再生、環境問題、地域活性化。日本ペンクラブ会員環境委員会副委員長、総務省地域力創造アドバイザー、内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師など要職多数。著書に「田舎力 ヒト・夢・カネが集まる5つの法則」(NHK生活人新書)「幸福な田舎のつくりかた:地域の誇りが人をつなぎ、小さな経済を動かす」(学芸出版)ほか多数。

金丸弘美さんは、イタリアで出会った「食材のテキスト」に共感し、地域食材を掘り起こしてその価値を活かす料理、商品を売り出す「食のまちづくり」を全国各地で応援しています。
PART2では、「食のまちづくり」の具体的な進め方、商店街や中心市街地での展開方法などについてお伺いしました。
(PART1から読む)

「食のまちづくり」の進め方

連携で進める地域食材の掘り起こしと「食材のテキスト」化

――「食のまちづくり」はどのように進めていけばよいでしょうか。

まずは、地元の食材について、農産品も水産品も、市場に出ているもの、売り物になっているものに限らず、庭先にある果物なども含めて、全部洗い出してみることです。

その中で、一番売りたい食材から「テキスト」化するのがよいと思います。その食材が、いつから栽培されていて、どういう栽培方法があって、何軒の農家がそこにかかわって、どんな品種で、どの時期にどれくらいの量が出て、地域の文化にどのように関わってきていて、それはどんな味なのか、ということを全部調べあげてほしい。

テキストは自治体が中心になって作ってもらうのですが、実は地域の関係機関が連携する横断組織が必要です。「つなぐ」という役割については行政が一番強いはずですから、中心になってもらいます。

だけど、今の行政だったらみんな縦割りになっている。たとえば、観光課で食のまちおこしと言っているんだけど、観光課の人は品種については不案内。だから、農政課と組んでくださいと頼む。栄養価のことは保健課と組んで算出してください、と頼む。農政課でもわからないことはJAと連携しなくてはいけない。JAもそこまでの文化的な背景となると分からないだろうから、今度は県の試験センターに頼む。さらに地元の大学も連携させることができたら幸い。そこに料理家が入って、料理を組み立てる。そうしたら、その食材の付加価値が高くなって、かつそれは子どもたちに教えることもできるわけです。その一体化を図ろうというのが食材のテキストなんですよ。テキスト化は、早ければ、4、5カ月くらいでできます。すでにかなりレベルの高いサンプルを作ってあるので、こういうふうにしてね、と助言するんだけど、やはり面倒だし、時間がかかりますから、なかにはインターネットなどで調べた情報だけでテキストを作ってしまうところもあるんですね。しかし、それでは、その食材が持つ優位性といった部分がどうしても抜けてしまって、結局、売れる商品にはなりません。

調理実習と試食会のワークショップ

――「食材のテキスト」の上手な活用方法はありますか。

たとえば、先日はテキストをもとに調理実習と試食会を組み合わせたワークショップを開催しました。あらかじめ、料理家に食材を活かしたメニューを30品目つくっておいてもらい、料理を作る参加者を10名から20名と試食会に参加する人を含めて最大で30名くらい集まってもらいます。

そこに商工会の方や、市会議員、マスコミを呼び、試食していただく。そこで、食べたいものや売りたいもの、気に入ったもの、家庭で作りたいもの、目的ごとにベスト5を選んでもらう。集計結果とテキストを合わせてみると、自分たちの食材が具体的にどういう食材で、どういう食べ方ができて、どういうバリエーションができるのかが一発で分かります。そこからメニュー開発をやっていくんです。一斉に食事して、食べて背景が分かれば、お母さんたちもその食材の先生になれる。地元の人が、自分の口で語れるようになる。できた料理を味わうだけにとどまらない知識の提供があるんですね。

何万人も集まる食のイベントは、地域の外から人がやってきて盛り上がるものの、一過性に終わってしまう可能性があります。だったら、30人くらいの規模で開催するほうがいいと思っています。参加者同士の顔が見えますし、ノウハウが一緒に共有できる。そこに学校給食や保健所の栄養士に来てもらう。料理家や農家さんに来てもらう。そこで「この食材って、こんなに簡単な料理ができるんだね」、と感動する。地域の自慢の食材のなかでもいいものしか使わないから、絶対においしい料理ができる。それでみんな、その料理をメモしたり、ビデオを撮ったり、写真を撮ったり、その時の料理家の言葉を書き留める。そうすると、翌日からみんな地元の食材を使った料理家になれるんです。しかもそんなに難しいものつくっていないから。ノウハウは地域中に広まります。

サトイモやかぼちゃなど特定の食材だけで60品目を作ったこともありますし、地元の食材を複数組み合わせて30品目披露したこともあります。メニュー開発は専門の料理家にお願いしたり、地元の料理屋さんを探すところからはじめたりと、地域によってさまざまですね。たとえば、若い人たちや女性が集まる店に連れて行ってもらってそのシェフをスカウトする。そこのシェフがやる気になって、発信してくれれば、地域の女性たちは「あのシェフがやるんだったら行きたい」となる。宿儺かぼちゃをテキスト化した飛騨高山もその手法でシェフを集めました。 また、「家庭の味」ということでお母さんたちができる料理にすることもあります。ただ、家庭によって調味料のこだわりはまちまちだったりしますので、まずは使用する調味料を確認しあうことからはじめますね。「食のまちづくり」として、せっかくの地元の食材の個性を大事にするためには、基本をきちんと押さえておく必要があると思います。

地元の女性が参加するワークショップの様子
地元の女性が参加するワークショップの様子(茨城県小美玉市)

地元女性を主役に、マスコミの上手な活用を

――「食のまちづくり」を根付かせ、持続的な取り組みにするためのポイントは何ですか。

食のまちづくりはいろんな地域で行われていますが、普段料理をしないような人たちが集まってもダメなんです。

よく、ブドウがあるからジャムをつくろうとなりますが、毎日ジャムを使っていますか? ジュース飲んでいますか?と聞くと、使っていない。自分が普段食べないものを売ろうとしても、本当に売れる商品にはたどり着かない。消費行動の7割は女性が起こすといわれていますし、普段、料理に近いのはやっぱり女性。そういった消費の主役の人たちが集まって料理しないと、本当にいいもの、欲しくなるものは作れないです。

女性の集め方も、そんなに難しいことではありません。「料理が好きな奥さんはいませんか?」「農業は継ぎたくないけど、カフェをやりたいお嬢さんは?」「商店街の空店舗でレストランをやってみたいと言っている女性グループは?」「学校給食の栄養士さんは?」「パン屋さんをやっている女性は?」と、聞いてみると「いる」という答えが必ず返ってくる。農協や町内会から縦に通達を出すのではなく、その人たちに直接声をかけて集める。それで集めた人たちでワークショップを開くんです。

私はできるだけ地元の女性が参加して、ノウハウを獲得してほしいと思っています。自分のスタンスはアドバイスに入っているだけ、最後に彼女たちにスポットがあたるようにしてください、とお願いしている。彼女たちのなかには、私たちが伝えた食材のテキストやワークショップのノウハウが確実に残る。そして、彼女たちの自信にもつながる。彼女たちが主役になれば、そしてテキストがあれば、やり方、考え方は地域に残りますから、「食のまちづくり」は持続的なものになっていきます。

もうひとつ、ワークショップ開催においての最大のポイントは、きちんとマスコミを入れて活動をアピールすることです。そうすれば、来場した30人だけでなく、場合によっては数万人が、この取組を具体的に知ることができます。いたずらにイベントの規模を大きくしなくても、地域を越えて広く伝えることができます。

取材に来てくれた記者が料理に詳しくない人だったりすると、「何月何日に地元のお母さんたちがこんな料理をつくりました」で終わる記事になってしまいかねません。しかし「テキスト」があれば記者やライターにも、地域の食材の知識や、ワークショップやイベント、そして取組の趣旨も正しく伝わることになります。マスコミで紹介されることによって、取組に関わっていた人たちの自信に繋がり、取組がさらに広がっていきます。

商店街や中心市街地での「食のまちづくり」の可能性

食・料理の提供にとどまらない、商店街内、地域内との連携を

――商店街や中心市街地での「食のまちづくり」の可能性はいかがでしょうか。

商店街にはたくさんの料理屋さんがあります。それならば、一箇所に囲い込むのではなくて、横の連携をした方がいいと思います。たとえば、中華料理店と一緒に親と子の肉まん教室を開いたり。医療機関と一緒に生活習慣病のためのメニュー提案をするなど、さまざまな可能性が考えられます。

地元に特産物があるならば、それを使った料理を出す。その店にはときどき農家さんがきて、特産物の背景から説明してくれる場を作る。さらにその特産物を作っている農家のマップを用意し、そのうちの何軒かと提携して、収穫体験させてくれる場を作る。さまざまな形で地域との繋がりをつくるといいですね。

長崎県平戸市の商店街にある「按針の館」という民家を改修した建物で、シェフを交えて料理イベントを開催したこともあります。会場の選定はとても重要です。同じイベントでも、市民会館で開くのと、風情のある場所で開くのとでは大きく結果も変わってきます。料理の前には漁港の見学も行い、サザエはエスカルゴ風に炭火で焼き、地元の杜氏の解説つきで日本酒を出したりもしました。イタリアでスローフードを視察したとき、お城やオペラハウスを使ったレセプションや、表彰式に出たんです。そのときのドレスコードは民族衣装でした。そんなふうに、遊びの文化を全面的に出せるのがいいと思いました。その地域オリジナルのものがあり、まちの顔が見えて、さらに来た人もおもしろいと思う。みんなそういう発想に至らないから、困った困ったという話になっちゃう。ワークショップの会場を地元の人でさえ知らなかった場所から選ぶということも結構あります。いいところはまだまだ残っています。

やれば分かる。気が合う人たちから始めよう

――商店街や中心市街地ならではの展開可能性があるということですね。

地域食材の調査やテキスト化をしようとすると、農業関係者でも「だれがつくるんだ?」とか「横に繋がりがないから難しい」などという話になります。ただ、こちらにはすでに多くの経験がありますので「試験センターの方が知ってますよ」「漁業センターに問い合わせてみてください」と、アドバイスをしてます。取り組んでみて、食材のテキストという成果物ができれば、みなすぐ納得してくれるはずですよ。別に大々的にする必要はなくて、うまくいかなければすぐにでも止めればいいわけで、おもしろかったら進めればいい。やらないで論議や会議に明け暮れていても仕方がありません。 商店街や中心市街地の人たちが積極的に参加することで「食のまちづくり」の可能性は広がります。どんな商店街でも異論が出ますが、まずは気が合う人からやっていくしかないんじゃないですか。やればすぐにわかりますから。

 

 

登録日 2013年2月27日(水曜)00:00

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