コラム・事例紹介

第20回 まちづくりコラム 「手作りマップで、にぎわいと回遊性を!」 藤田 とし子

藤田 とし子

藤田 とし子(ふじた・としこ)

かしわインフォメーションセンター(NPO柏市インフォメーション協会)事務局長
大学卒業後、西友に入社。育児のために退職後は、地域情報誌の執筆・編集等に携わる。平成13年のかしわインフォメーションセンター設立に際し、同センターの石戸理事長に誘われる。事務局長として同センターを取り仕切るとともに、明るい笑顔と親切な対応で、まちの魅力アップに日々奮闘している。

かしわインフォメーションセンター(=以下、KIC)は千葉県柏市の中心街、JR常磐線、東武野田線が乗り入れる柏駅に隣接した商業ビルの3階に開設された官設民営の情報提供施設です。
ここでは、柏を訪れる様々な人たちに道案内や交通アクセス、飲食店やショッピングガイド、公共施設、観光名所、イベント、話題のスポットなど、まち歩きが楽しくなる「とっておき情報」を、ボランティアスタッフが中心となってご案内しています。平成13年10月開館以来、多くの方々にご利用いただき、これまでに30万人をお迎えしました。

この施設の管理・運営は、柏駅周辺の商業者や大型店、ホテル、大学、市民など様々な分野の人たちで組織する「柏市インフォメーション協会」があたっています。平成15年3月、NPO法人格取得後は単なる「情報提供」にとどまらず、「柏おもしろMAP」シリーズの発行、各種イベント開催等、地域のさまざまな人たちと連携しながら展開する「情報発信」を通して、地域の活性化に貢献するまちづくり事業に取り組んできました。

にぎわい創出の必要性

今、全国各地で商店街の衰退、中心市街地の空洞化が問題となっています。
私もKICオープン当初から、柏駅周辺もまた、近い将来同じような問題をかかえるのではないか、という危機感をもっていました。
当時は、柏駅のすぐ近くを走り抜ける国道6号および16号線沿線や隣接市の郊外に大型ショッピングセンターが相次いで開業するという時代。また、5年後には、秋葉原=つくば間を35分でつなぐ「つくばエクスプレス」の開通が予定されるなど、柏駅を経由して都心へ通う通勤・通学客、買い物客の減少が大いに懸念された時期でもありました。

ですから、とにもかくにも「街の元気は、にぎわいから!」。市の顔でもある柏駅周辺に多くの人たちが訪れ、買い物や食事、イベント参加などを通して、楽しく快適な時間を過ごせる街にしたい。住む人も通う人も、そして訪れる人たちも、誰もが笑顔で元気よく、心躍らせる、にぎわいの街であって欲しい。
そのような思いから様々な事業を企画するなか誕生したのが、『裏カシMAP』に代表される手作りマップ=「柏おもしろMAP」シリーズなのです。

『裏カシMAP』誕生のきっかけ

まず一つ目は、KICを訪れるお客さまのご要望にお応えしようと思ったこと。

平成13年秋の開館当時からボチボチと、「ウラハラ(原宿の裏通り)で有名なフリークスという古着屋の支店を知りたい」と来館する若いお客さまが現れました。特に土日には、千葉市や房総方面、つくば、土浦、浦和、大宮、そして吉祥寺や三鷹、町田、横浜方面からの来館者も多く、一様に「柏の有名な古着屋さんを教えて!」と尋ねます。
ところが、目的の古着屋さんは駅からちょっと離れた路地裏(=裏カシ)にあり、口で説明するのはちょっと難しい。また、有名ではないけれど地元では人気のショップもありまして、「それなら、一挙にご案内したいよね!」ということになったのです。

二つ目は、以前から課題としてあった、柏駅周辺のにぎわい創出のしかけづくり、という点。

どこの街でも同じだと思いますが、駅周辺の商店街は各々、通っている客層が微妙に違います。例えば、この通りは若い女性や買い物客が多いとか、あの通りはビジネスマンしかいない、とか。人は皆、目的地に向かうとき、無意識のうちに最短コースを選びます。でももし、いつも通らない通りや商店街に、自分の興味とか感心のあるお店やイベントがあるという情報を得たならば、ちょっと寄り道したくなると思うのです。
そこで、いつもお決まりのコースしか歩いたことのない人たちの意識をシャッフルさせて、回遊させる仕組みを作ったら、まちが活性化するのではないかと考えたわけです。その手段として、誕生したのが、スタッフが自ら汗を流して作成する、手作りのMAPです。

実際には、まず駅周辺を歩いて回れる半径1キロ圏内をターゲットエリアとして、マップのスタイルはよくある「商店街単位」ではなく、「カテゴリー(ラーメン屋編、古着屋編etc)ごと」で作ることにしました。

三つ目は、KICを多くの方々に知ってもらうためのPRをしたいと考えていたこと。

オープン当初、新聞各紙や市報で取り上げてはいただいたものの、その後なかなかマスコミに取り上げていただく機会もなく、また組織としては広告宣伝費などもっていなかったこともあり、市民の皆さんにKICの存在を知ってもらうことができずにいました。
そんななか、何か楽しい企画を立ち上げ話題になることで、広くKICの存在を周知させることができるのは?と考えました。

ですから、このMAPは限定部数しか発行せず、またKICでしか配布しないという戦略をとりました。お店から掲載料を取らない代わりMAPをレジ周りに貼っていただき、「欲しい人はKICへ行くといいよ」とすすめてもらうことにしたのです。
また、発行部数限定なので「早く取りに行かなくっちゃ!」という思いをお客様に持っていただくことで、連日来館者がどっと押し寄せ、新聞各紙が大きく記事を取り上げてくれました。口コミ×マスコミで「ウラカシMAPの存在」を広めようと思ったわけですが、結果的に大成功でした。

『裏カシMAP』成功の要因

まず、作り手の側から申しますと、

  1. 既存の商店街のマップとの徹底的な差別化→単色刷り、部数限定、配布拠点の限定
  2. あらかじめ、このMAPを大いに使っていただきたい人たち=ターゲット層を絞り、その人たちの感性に響くコンテンツ、デザインにこだわったこと
  3. 一枚のMAPをフリーペーパーに見立て、実用的な価値(店の住所、電話番号、定休日etc)だけでなく、受け手の感性に響く、感情的な価値(店の雰囲気、オーナーの人柄etc)を盛り込んだ情報を掲載したこと
  4. リサーチ担当に、MAPのターゲットとなる年代層の大学生(インターンシップ実習生)を起用したこと → 等身大のコメントを引き出すことができた
  5. 地元出身のイラストレーターを起用し、愛らしく手作り感あふれるタッチのデザインにこだわったこと

が、あげられます。

これらにより、お客様には、

  1. 今までの商店街のマップにはない、新鮮な感動
  2. 思わず訪ねてみたくなる、街への〈わくわく感〉=〈期待感〉
  3. 掘り出し物や自分にとっての〈とっておき〉を探し歩く楽しさ

を、感じていただけたのではないでしょうか。

また、実際、裏カシ界隈のショップには若い人たちが欲しいと思う商品が揃っていて(=個店の逸品が充実)、お店の人たちもお客様とのコミュニケーションを本当に大事にしながら販売している。そんな、お客様にとっての快適な空間をきちんと築けていた、ということも大事な要因です。

『裏カシMAP』がもたらしたもの

  1. お客さまに対しては、地図を片手に、お目当てのショップを訪ね歩く〈まち歩きの楽しさ〉を提供できた。物を買うためだけに訪れるのではなく、「裏カシ」ならではの空間を満喫しながら、周辺の商店街をのぞいてみたり・・・
    → 回遊性と界隈性、にぎわいの創出
  2. 商店街の人たちにとっては、MAPを持って回遊するお客様たちがそれぞれのショップの情報を他のお店のオーナーや店員さんに伝えることで、ショップ同士の横つながりや連帯が生まれ、新しい形の共同体ができた
    → 街づくりの新しい担い手を発掘
  3. 商店街にとっては、来街者の増加はもとより、出店者も増え、空き店舗が出てもすぐに埋まるようになった
    → 空き店舗の解消
  4. まちのイメージアップに貢献。マスコミ各紙で取り上げられ、「裏カシ・ブーム」が到来!
    → 元気な街・柏を全国にPR
  5. 市民にとっては、「裏カシのある街・柏」=「若者文化を温かく育てる柏」と評価されることで、市民が自らまちを見直し、「柏って、いいところだ!」と〈まちに誇りと愛着〉を感じるようになった
    → シビックプライドの醸成

以上、大きく5つのことがらが上げられます。

そして、なによりも素晴らしかったことは、立場や世代を超えて「柏を、いいまちにしたい!」と願う人たちのネットワークが築けたこと。まちの活性化にはなくてはならない原動力のようなものですね。このことは、柏の大きな財産であると思っています。

さらなる活性化に向けて

KIC事業としては、同様の「柏おもしろMAP」シリーズとして、これまでに「ラーメンあんな店こんな店☆MAP」や「大人が楽しむ 柏のステキ☆ランチマップ」、「ガッツリ食べたい!柏の男飯☆マップ」など、まちの回遊性とにぎわい創出のツールとして、さまざまなマップを発行してきました。今後もまた、新たな切り口を用意して、お客様があっと喜ぶ「柏おもしろMAP」を発行していきたいと思っています。

また、まち全体の課題としては、柏はこの10年、ストリートミュージシャンや若者のまち、元気でにぎわいのあるまちづくりに取り組んできましたが、これからはさらなる深化を求め、大人も楽しめる、文化的で落ち着きのある、高感度なまちづくりを目指していきたいと考えています。

平成18年秋から市民有志が集まり取り組んでいる「JOBANアートラインプロジェクト柏」もそのひとつです。KICもこのプロジェクトの立ち上げ当初から参加し、さまざまなアートイベントの開催を通し、〈柏のまちの新しい魅力創出〉のお手伝いをしています。

同プロジェクトのねらいは、イベントによる人集めはなく、多くの人たちが観て、聞いて、参加することにより、「自分たちも、小さなことからまちづくりに関われるんだ」と実感していただくこと。そして、さまざまな人たちとのコミュニケーションとコミットメントのチャンスを用意し、「柏、大好き!」の心を伝えていきたいと考えています。

まちの活性化に必要なこと。それは、単に人を集めることではありません。

そのまちを愛する人たちがいて、笑顔でイキイキ活動している様子を「見える化」すること。頑張ってまちづくりに取り組む人たちの「汗」を伝えること。
そうすることで、多くの人たちがそのまちに魅力を感じ、「用がなくても訪ねてみたくなる、にぎわいのまち」へと生まれ変わるのだと、私は考えています。

関連リンク

かしわインフォメーションセンター

登録日 2009年3月06日(金曜)11:44

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