コラム・事例紹介

第22回 まちづくりコラム 「英国タウンマネジメント現地調査・研修報告」 加藤 博

加藤 博

加藤 博(かとう・ひろし)

昭和24年生まれ。青森県西津軽郡深浦町出身。明治大学農学部卒業 「この土地は、先祖からもらった物ではない、子孫から借り受けているのだ。」を心の拠り所に、毎月40回以上の会議に出席する。全てが「まちづくり」に関するものばかりで、これらが「天命」とも思っている。 青森市新町商店街振興組合副理事長、青森商工会議所常議員、青森市中心市街地活性化協議会副会長、(有)PMO(パサージュ・マネージメント・オフィス)代表取締役社長 他役職多数 。

平成20年9月22日~28日、「まちづくり」の先進地である英国で行われたタウンマネジメント現地調査・研修に参加しました。
ロンドン(人口約700万人)のATCM(TCMの全国支援組織)や、ロンドン周辺の都市でTCM活動を実践している4つの地域―グレイブスエンド(人口5万6千人)・レディング(人口14万人)・クロウリー(人口10万人)・オルトン(人口1万6千人)-それぞれ人口規模の違う地域を訪問し、意見交換や取り組み状況の把握をしました。この調査では、中小企業基盤整備機構まちづくり推進課の強い思いと、我々サポーター(中心市街地活性化協議会支援センターまちづくりサポーター)の強い危機感を感じることができ、得がたい体験となりました。
我が国では、商店街法人組織が存在し、古くから「まちづくり」運動を展開してきましたが、1990年代始めから大型店の乱開発促進、ゾーニング規制の甘さ、商店街法人の経営難、加えて昨今のマインド不況・マスコミ風評被害等、中心市街地の疲弊が強く叫ばれているのが現状です。
英国には日本の様な商店街法人はないのですが、郊外開発で中心市街地が疲弊していく状況を反省する中で、政府と民間の危機感が急速に高まり、TCM(タウンセンターマネジメント組織)ができました。このような政府と民間のパートナーシップで中心市街地の再生を図っています。
英国の各都市にはタウンマネージャーが存在し、様々な関係団体と連携をとっており、共通の戦略・行動計画(P・D・C・A)を基に協力して「まちづくり」を実行しています。
英国国内で約500位までランク付けされている順位を一つでも上位に押し上げることを使命としており、まちの現状を認識した上で強い部分をより強化し、弱い部分を克服するという行動計画を立案しています。事業実施後の評価が重要視され、効果が得られればより多くの参画・投資が可能になり、費用対効果を如何に図れるかがポイントとなってきます。この考え方は、我々「あきんど」の考え方と極めて似ており、「活性化への参画・投資が自分達の売上に跳ね返ってくる」、この論理の上に英国の中心市街地の「まちづくり」は成り立っているのです。
何よりも、企業・行政が資金を提供して「まちづくり」・「中心市街地活性化」に強く取り組み、政府が後方支援する姿勢は、失敗から学び、軌道修正した結果と強く感じた次第です。

官民の連携や多様な関係者により「まちづくり」を進めるという点は、まちづくり3法を見直し、中心市街地活性化協議会を中心としている日本のまちづくりの仕組みや、タウンマネージャーの活躍が期待されている日本の現状にも通じており、今回の調査・研修は今後大いに役立つと考えています。

次に、訪問した各都市の状況を簡単に述べてみたいと思います。

 

ATCM
-ロンドンにあるTCMの全国組織

情報提供・研修・指導・人材育成等により、全国のTCMをサポートしています。
企画調整型であり、1993年に設立。小売業に対しては米国の手法を取り入れています。
政府からの資金提供はなく、主に後方支援を受けており、120万ポンド(約2億4千万円)の資金を有している〈内訳:①会費20%、②中心市街地の大企業20%、③会議開催・サマースクール研修等20%、④リサーチ・コンサルタント料・EU補助金:2つの事業を3年間で70万ポンドを取っています(コンペで確保)〉。
会員制をとっており、主な会員は1,300名で、タウンマネージャーが中心。その他に、海外にも多くの会員がいます。
人材育成を特に重要視しており、TMG(タウンマネージャー)とのパートナーシップ、サマースクール、研修トレーニング、政府方針変更への対応、メディアへの対応、大学との連携強化によるスクールコース等、TMGへの指導・教育を中心に実施し、各地域でTMGが効率よく仕事をするために、より多様な団体とのパートナーシップを図れるよう指導しています。
現在400地域のTMGは兼業で他に仕事を持っているため、彼らの給料を保証して専業でも出来るようにすることが大事。小さな規模での開発を動かしていくためには、マネジメント・マーケティング・リーダーシップをより強化することが必要。また、TMGは仕事の立場上孤独であり、そのためにもネットワークの形成・コミュニケーションが重要となります。中心市街地が衰退すると、多くの出店企業(マークス&スペンサー、テスコ、ブーツ、W・Hスミス等)の存続に関わります。そこで、「市民の大きな支持を得るためにも、メディアの評価がポイントであり、イメージの発信が大事」と最後に言った、代表のサイモン・クイン氏の言葉が今でも焼きついています。

 

グレイブスエンド
-ロンドンから約40km、鉄道で1時間の距離

近年、ユーロスターの停車駅が設置されるということで大規模な再開発事業計画が進められ、ロンドンまで20分・パリまで2時間と便利になります。それに対する期待と危機感が、市の職員でありTMGのサンガ氏、フックウェイ氏の2名を動かしています。TCMは1990年に組織され、商店(小売業)・市・州・ブーツ社、マークス&スペンサー等大型店が参加しています。
英国内に存在する8つの大型SCのうち、レイクサイドSC(1991年出店)・ブルーウォーターSC(1999年出店)など、有数のSCが出店しています。
この危機感が大きく、「郊外店進出の影響をいかに少なくするか」が重要となってきます。
小売業ランキング(街の総合力)は全英175位だったものが、ブルーウォーターSC進出後199位まで低下!
そこで市街地の中心部に大型店(ブーツ、マークス&スペンサー等)を集積、全体として「回遊性のあるSC」となるよう、整備を進めたのです。
車道・歩道の整備を行うとともに、中心部の交通規制を実施。多くの人々が街に戻って来ました。さらに、街を花や緑でいっぱいにし、美化運動の徹底を図ることにより、小売業ランキングを173位まで取り戻しました。今後の課題は、現在1万5千ポンド(300億円)を投じる予定で実施計画が進められている、地下駐車場、33階、103mのシンボルタワー、公共空間、600戸の住宅等の再開発事業が、大型店SCとの共存し、機能分担できるよう補完する専門店を構築することができるかどうかです。新しい場所を活かすことをコンセプトに、競争するのでは無く、地域の強みを発揮することで「ショッピングしたい・働きたい・住みたい・訪れたい」と思える街にすることを目標にしています。
TMGの明確なリーダーシップの下、戦略・ビジョン・方向性を明確に定めて実行しており、改めてTMGの重要性を強く感じました。

 

レディング
-ロンドンから約59km、テムズバレー地域の中核都市

英国でも最も急速に成長した商業都市であり、中心市街地(旧ビール工場跡地)にショッピングセンター(オラクルコーポレーションSC)を建設、これを核に「まちづくり」に取り組み、小売業ランキングでは10位にランク付けされています。
1980年代後半からTCM活動が始まり、2006年に官民のパートナーシップにより、CICという有限責任保証会社を設立、「マーケティング」「BID」「ビジネス」の各部会が設置され、TMGが綜合調整役として活躍しています。
英国内でも米国のBID(ビジネス改善地区)制度を最も早く取り入れ、BIDに出資するとプラスのサービスが受けられ、新しいコンセプトに対してビジネスが何を要求しているのかを徹底して調査しています。即ちマーケティングの重要性を最も認識しているのです。ホテル、SC、専門店、カフェ、バー、スーパーマーケット、警察など多様な会員が事業税(法人税・固定資産税)の1%を会費(年間23万ポンド・約46百万円)として収めています。
これにより清掃、治安の向上、プロモーションなどを可能にしています。
TMGのテイム・スミス氏は「各個店をヒアリングする事を日課としており、日頃からきめ細かい対応を図る事が必要だ」と言っていました。
小売業の入れ替えも多いため、その都度話し合いを行い、コミュニケーションを密に取るという細やかなサービスで中心市街地の活性化を目指しています。中心市街地が良くなることは、より広いエリアでの活性化にもつながります。チャンスをつかむことは同時にリスクも負うことになります。その困難な状況に立ち向かうためには、人材が大事であり、強力な意志が必要だと思います。スタッフは4名で内2名は州政府からの出向。TMGのスミス氏が「会社と州政府のために自分の全力を出して努力している」と言い切った場面は今でも脳裏に焼きついています。

 

クロウリー
-ロンドンから45km、1947年にニュータウン指定された比較的歴史の浅い地域

行政主導でTCMの設立が進められ、TMGによるパートナーシップの推進が行われ、「景観」「マーケティング」「雇用」といった部会を設置し、「まちづくり」に取り組んでいます。
ニュータウンらしく、商業・住宅・学校・産業地区が明確になっており、航空・流通・物流等が発展し雇用に力を入れているため、失業率1%・流入人口はロンドンに次いで2番目です。サービス業もレディングに次いで強く、大学・企業との連携も強いが小売業が全英ランキング56位と思ったよりは低い、綜合ランキングは48位です。
商工会議所との連携を強くし、弱点である小売商業者や市民との連携を強め、意見交換を図りたいとし、個別に店舗のヒアリングをし、売上、利益の把握に努め、TCMの効果・メリットを理解してもらっています。
TCMのボブ氏はマークス&スペンサーのマネージャーだった方で、「就業訓練はまちの活性化に大変重要だ」と言い切っていたのは、さすが雇用部会を重視し、就業率を全英トップに押し上げた自負からだと感心させられました。

 

オルトン
-ロンドンから45km、市場町として古い歴史のある街

農業やビール工場を中心とした町から、近年は情報産業も立地、緑が多く環境が素晴らしい田舎町。
「オルトンに行けば何かがある」といった仕掛けや、広報・宣伝により賑わいを再生。マーケットの開催日は通行量が40%アップ!
タウンマネージャーは町の様々な事業者・行政・地域住民とのネットワークを強化し、イベントの企画、プロデュースに取り組み、一体となった「まちづくり」に取り組んでいます。以前は町の衰退が著しく、コンサルに「町が死んでいる」と言われたが、イベント等の効果的活用により、7~8年で再生。今ではATCMのモデルになっている程です。
1年に4回のビックイベントが特に有名で、クラッシックカーフェアーには5~6千人の観光客が来て全英から152台のクラッシックカーが家族と共に集合するとのこと。2~3年前と比較し小売商業の売上が50%アップしています。
165店舗中、半分はナショナルブランド店、半分は地元小売業者であり、ナショナル企業と地元商業者との良い意味でのライバル意識・競争力が発揮されています。
最後に町長さんは、ボランティア活動で任期は1年との事、「日本のロータリークラブ、ライオンズクラブの様なもの」と笑っていたのが印象に残っています。
以上、駆け足で報告をまとめてきましたが、日本と比較すると社会環境・国民性の違いはあるにしても、英国のまちづくりの考え方・進め方は、我々タウンマネージャーの考え方・ビジョンと同じだと強く感じました。日本においては、中心市街地活性化基本計画認定後も、目標数値達成のため、その都度、社会環境の変化に伴う見直し、修正、追加の作業をし、申請する事が重要だと思うのです。中心市街地活性化協議会もしくは専門部会でこの作業を推進しているかどうかを監督することもTMGの重要な仕事の一つと心得るのです。

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登録日 2009年3月06日(金曜)14:59

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