コラム・事例紹介

第36回 まちづくりコラム 「商店街活性化からまちづくりへ」 松山 茂

松山 茂

松山 茂 (まつやま・しげる)

宮崎商工会議所 中小企業相談所 副所長
平成元年、宮崎商工会議所に入所。経営指導員、日本商工会議所情報化推進研究会委員、同ネットワーク化研究会委員、専門経営指導員を経て、平成11年からTMO(街づくり推進機関)事業を担当し、宮崎TMO事業構想の策定などに従事。以後、宮崎市の中心市街地の活性化に向けて日々奮闘している。

1.宮崎市中心市街地商店街の衰退

中心市街地商店街の衰退は、「外部環境の変化」、「個々の商店の魅力の低下」、「商店街の組織・活動の停滞」によるものだと思われる。

現在、「生活者のライフスタイルの多様化」により、商業の環境は大きな影響を受けている。その原因は、(1)消費税の施行(平成元年施行、3%から5%への税率アップ)、低価格志向により価格へ転嫁が困難、(2)人吉・えびの間高速道路の開通(平成7年)による商業の広域化・地域間競争の激化、フェニックス族と呼ばれる高速バスを利用した女性買物客の出現、(3)国の産業構造改革・規制緩和政策、大店立地法の施行(平成10年)による旧大店法の経済規制から生活環境の配慮へ転換、(4)週休2日制・学校週5日制の浸透による商店街への来街頻度の低下、(5)インターネット・携帯電話の普及による販売チャネルの多様化など「外部環境の変化」に商店街・商店は大きな影響を受けている。

個々の商店の経営は、経営基盤の脆弱さに加え、(1)売上の減少、(2)経営者の高齢化・後継者の不在、(3)借入金の返済、テナント家賃の支払いなどの固定費の占める割合が増加、事業継続がままならない商店も多い。前向きに経営ができない環境にあり、商店の魅力も低下している。

「商店街の組織・活動」は、各商店の経営力が弱まる中で、(1)連帯意識が低下、本来の強みであった横の連携が弱体化、(2)組織が高齢化し、行動力が低下、(3)今まで以上に事業実施までの合意形成に時間がかかり、まとめ役となる商店街役員に負担が重くのしかかる。

2.重点地区の設定と商業活性化のプロジェクトの実施

都心部の顔となる中心市街地の再生を目的として「中心市街地活性化法」(平成10年7月施行、以後「中活法」という)が施行されて、10年以上の歳月が経過した。

「中活法」・「改正都市計画法」・「大店立地法」と合わせて「街づくり三法」と言われ、商店街関係者・商業者の期待を一身に集め、鳴り物入りで始まった。

平成10年12月に「宮崎市中心市街地活性化基本計画(旧法、全国19番目の認定)」では、中心市街地に重点地区を設定し、その地区の特徴に応じてゾーニングを行った。中心市街地の重点地区は、メインストリートである橘通りの3丁目地区と1・2丁目地区、大淀川河畔地区、宮崎駅周辺地区に区分される。

橘通3丁目地区は、大型店が集積する商業の中心エリア。5つの大型店と7つの商店街で形成する「Doまんなかモール委員会」が活発に活動している。橘通3丁目の西側は通称「ニシタチ」と言われ、県内最大の歓楽街として観光資源になっている。「ニシタチ」エリアの7商店街では、「ニシタチ7(セブン)モール」を結成しイベントを実施、集客強化を図っている。

橘通1・2丁目地区は、県庁・市役所からなる官庁街である。このエリアには、橘通1丁目・橘通2丁目・橘通名店街の3つの商店街があり、それぞれの商店街の有志により「ひふみ会」が結成され、県庁前楠並木通りで音楽祭など、様々なイベントを実施して賑わいの創出を図っている。19年2月に東国原知事が就任し、県庁が観光スポットになり県内外から多数の観光客が訪れている。

大淀川河畔地区は、川幅400mの大淀川と堤防沿いに整備された「橘公園」の景観を中心にした観光スポットにホテル・リゾートマンションが立地している。宮崎リゾート温泉「たまゆらの湯」も観光の目玉となっており、足湯など温泉を利用した施設や温泉と夜神楽を組み合わせたイベント「宮崎たまゆら温泉かぐらまつり」は、プロ野球キャンプシーズンに併せて毎年2月に開催され、観光客に好評である。

宮崎駅周辺地区は、陸の玄関として平成7年に鉄道高架が完成、平成8年以降1000戸以上のマンションが整備された。駅西口の市有地、県有地にバスセンターを整備し、企業立地を進める宮崎駅拠点整備事業を、商工会議所グループ企業でSPC(特別目的会社)を設立し、商工会議所の移転も含め現在進めている。宮崎駅と橘通3丁目地区の回遊性を高めるため、宮崎駅前商店街の街路整備事業が昨年11月完成、景観整備が進んでいる。

橘通り3丁目エリアは「Doまんなかモール」と「ニシタチ7モール」、橘通り1・2丁目エリアは「ひふみ会」、大淀川河畔エリアは「温泉協同組合」、宮崎駅エリアは「宮崎駅前商店街」、それぞれの重点地区毎にまちづくりの主体となる組織があり、エリア間の競争意識も持ちながらそれぞれのエリアで特色を生かしたまちづくりが推進されている。

商業活性化プロジェクトは、TMO(宮崎商工会議所)が実施するものと、商店街等が実施するものがあり、TMOが実施した事業は、空き店舗対策事業や中心市街地活性化イベント事業、並びに商店街が実施する計画策定の支援である。

空き店舗対策事業として「アゲインビルのチャレンジショップ」・「橘通りよってンプラザ」・「キッズルーム」・「カリーノ8階フロア活用事業」・「レンタサイクル事業」を実施、イベント事業として「まちんなかプレイパーク事業」を実施した。

「アゲインビルのチャレンジショップ」では、6年間で68店舗が出店し、宮崎農業高校や宮崎海洋高校の高校生とチャレンジショップの出店者が共同して販売促進活動を行った。宮崎農業高校は、チャレンジショップが縁で「県庁楠並木朝市」(毎月第1・第3日曜日に開催)に参加している。

「まちんなかプレイパーク事業」は、学校週5日制の実施に向けた子どもの居場所づくりと文化の拠点づくりを目的として、宮崎市教育委員会の予算と国・県の商業振興予算を抱き合わせて予算化、商工会議所が実施主体となり、NPOや市民団体、大学・高校と協働してイベントなど事業を実施した。

「カリーノ宮崎8階フロア活用事業」は、平成14年2月に閉店した壽屋宮崎店の再開に伴い、8階フロアを市民のコミュニティスペースとして活用する事業で、「こどもらんど」をNPO法人ドロップインセンター、「まちの保健室」を宮崎県看護協会、宮崎大学のサテライトなど、それぞれの組織が運営を担当し、市民活動の交流拠点として事業を実施した。現在では、宮崎県就職相談支援センターの「ヤングJOBサポートみやざき」、宮崎県国際交流協会の「宮崎県国際交流プラザ」も8階フロアで業務を行っており、年間9万人の市民が来場した。

商店街が実施した事業は、ハード事業として「ニシタチの街路整備事業」や「宮崎駅前商店街の街路整備事業」があり、ソフト事業として「Doまんなかモール委員会」のイベント事業などがある。

「ニシタチの街路整備事業」は、430店舗の飲食店の有志が出資して「ニシタチまちづくり協同組合」を設立、事業を実施した。宮崎市が行う下水道工事に併せて、ニシタチの観光地化を目指し「人と時のカクテルの街」をコンセプトに街路灯を整備した。その後平成16年と18年には、読売ジャイアンツ「長嶋名誉監督」「原監督」やソフトバンクホークス「王(前)監督」など宮崎に縁のあるスポーツ選手の手形モニュメントを設置した。

「宮崎駅前商店街の街路整備事業」は、構想から2年がかりで40人の地権者の合意を取りつけ老朽化したアーケードを撤去し、宮崎市が行う電線地中化事業に併せて、経済産業省の「戦略的中心市街地商業等活性化支援事業」を活用して商店街のオープンモール化を行った。また、地元住民や宮崎大学経済政ゼミの協力を得て「あみだ市」を開催、地域自治会による公民館の整備についても商店街が積極的に協力している。

「Doまんなかモール委員会」は、宮崎市の中心市街地(どまんなか)を維持・再生・発展させるために、橘通3丁目周辺の7つの商店街と5つの大型店を中心としたエリアを一つのショッピングモールと見立てて「Doまんなかモール」と名付け、お客様の利便性向上と快適空間の創出を目的として各商店街、大型店が団結して共同の販促イベント等の活動を進めている。また、「30分無料共通駐車券事業」や宮崎山形屋の「黄札市」・ボンベルタ橘百貨店の「赤幕市」を併せた「赤札市」に「Doまんなかモール委員会」から70店舗が参加している。

その他民間企業が実施する事業として、「宮崎山形屋新館増床」、「カリーノ宮崎のリニューアルオープン」、「Y・Yパーク」(立体駐車場整備事業)、「みやざきアートセンター整備事業」、「宮崎駅西口拠点整備事業」などがある。

「宮崎駅西口拠点施設整備事業」は、約20年前から検討されてきた事業で、平成19年度に宮崎市がコンペ形式の事業企画提案募集を行い、これに宮崎商工会議所グループとしての提案が選定され、当所の事務局移転も含めて、商工会議所グループで準備を進めている。バスセンターを核として、商業施設やオフィス、ホテル等が入居する14階建ての複合ビル『壱番館』と隣接地に470台が駐車可能な『立体駐車場』の整備する計画で、平成23年秋頃の開業を目指している。

当所は、それぞれの事業にTMOとして積極的に関わってきた。

3.橘通りを中心とした公園化構想

 

平成18年8月に施行された、「改正中心市街地活性化法」では、「市街地の整備改善」と「商業の活性化」に、「都市福利施設の整備」と「まちなか居住の推進」が事業の柱に加えられた。都市福利施設としては、市民が気軽に立ち寄れて芸術・文化に触れることができる場所として「アートセンター」の整備を、まちなか居住としては、高齢者向け優良賃貸住宅供給促進事業を位置づけている。

平成19年5月に国の認定を受けた「宮崎市中心市街地活性化基本計画」は、基本理念として「夢を育むみんなの街」を掲げ、「橘通りを中心とした公園化」がその中心となっている。「自然を生かした花と緑に包まれた美しい都市空間の創出」をはじめ、「多様な主体の活動の活発化による活力ある地域社会の確立」、「都市機能がコンパクトに集積した歩いて暮らせる生活空間の創出」を基本方針に中心市街地を活性化する計画となっている。

本県は、昭和44年に「宮崎沿道修景美化条例」を定め、宮崎の特徴である豊かな自然を背景に全県公園化に向けた取り組みが進められてきた。「橘通りを中心とした公園化構想」は、その流れを中心市街地で展開しようとするもので、大淀川沿いの橘公園や県庁楠並木、橘通り・国道220号線のワシントニアパームなどの資源を活用した、これからの人口減少社会、超高齢社会、地球環境に配慮した低炭素社会に対応するまちづくりである。

「橘通りを中心とした公園化構想」は、一歩一歩着実に進んでいる。橘通り・国道220号線や橘通りにつながる県道・市道に交通規制をかけて歩行者天国にして様々なイベントが繰り広げられている。

「宮崎神宮大祭(10月)」、「まつりえれこっちゃみやざき(8月)」、「みやざき国際ストリート音楽祭(5月)」、「楠並樹コリドール(4・10月)」、「Doまんなかモールサンデーマーケット(毎月)」、「ニシタチパフォーマンス(毎週金・土曜日)」、「いっちゃがみやざき楠並木朝市(毎月第1・3日曜日)」、「宮崎駅前あみだ市(毎月第4日曜日)」、その他、Doまんなかモールの一番街・若草通・四季通など各商店街毎にイベントが開催されている。

また、宮崎市公園協会の協力を受けて市民による橘通り周辺の植栽ボランティア事業「まちんなかフラワーパーク」を年2回(春・秋)実施している。

4.まちづくりの推進

商店街は、生活の場であり、交流の場であった。人が住み、人が働き、人が学ぶ場として栄え、伝統的な祭りも行われ賑わいもあった。市場もあり、生鮮食品も買うことができた。洋服から家電・日用品にいたるまでありとあらゆるものが揃い、家族・友人と「街に行こう」とウキウキ・ドキドキしながらでかけた記憶が皆あると思う。

そんな街が、いつの間にか買い物するだけの場所になってしまい、なんとなく居心地の悪いぬくもりの無い場所になってしまった。

現在は少子高齢化が進んでおり、今まで行ってきた都市づくりを大転換しなければならない状況になっている。

宮崎県の人口は、1,132千人(2009年10月1日現在)で、65歳以上の老年人口が289千人(25.6%)4人に1人の割合、2030年の人口は、1,013千人(△10.5%)で、65歳以上の老年人口は336千人(33%)と予想されており、3人に1人の割合となる。

高齢者の将来を見据えて、障害者の方々の暮らしを思うと、車中心の都市づくりでは、車に乗ることができない人、免許を持たない人に対して必ずしも利便性が良いとは思えない。郊外のショッピングモールだけでは、毎日の買い物も思うようにいかない。

現在のような中心市街地の空洞化は商店街・商店だけの問題ではない。

店舗を借りている経営者は、経営がうまくいかなければ移転していい場所を探す。店舗に出店する経営者より退店する経営者が多いと空き店舗は増え、空き店舗が増えればその商店街のイメージは悪くなり、買い物しようとする客が減りさらに空き店舗が増えて買い物客が減少する。この悪循環が続くと、地価も下落する。不動産価値が下落すると、土地・建物を所有している地権者も資産価値が下がって悪影響を受けることになる。

先般3月18日に県内公示地価は、9市11町233地点で平均価格(2010年1月1日現在)が前年を下回り、住宅地の平均価格は前年比△1.7%と10年連続でマイナス、商業地も同△3.5%と19年連続の下落となった。いずれも下げ幅は前年より大きくなった。米国に端を発した経済不況による雇用不安や所得減少、少子高齢化などを背景に、すべての市町で地価は下落した。

商店街活性化を進めるには、土地所有者が中心になってまちづくりを進めることが必要不可欠である。住む人、働く人、学ぶ人にとってどのような機能が必要なのか。行政機関、土地所有者、地域住民、市民団体、民間企業などの多様な主体がまちづくりに参画することで人材を育て、地域資源を最大限に生かした多様な主体の連携によるまちづくりの推進により、住んでいるすべての人々が誇りと思える宮崎市になるのではないだろうか。

最後に、多様な主体の中には行政機関も含まれており、国・県・市そして「中小企業基盤整備機構」などの組織の存在がある。行政機関の支援が無くしては、まちづくりを推進することは不可能である。今まで中心市街地活性化事業の実施には、多くの行政支援を受けてきた。特に「中小企業基盤整備機構」のアドバイザー制度は、「商店街の合意形成」、「計画策定支援」などに活用させていただき、今日があると思う。昨年7月に亡くなられた中心市街地活性化アドバイザー「小宮和一先生」には当市のほとんどの事業でご指導頂いた。地元商業者の方々も「小宮和一先生」の訃報に悲しんだ。ご冥福をお祈りし、せめてもの恩返しに、宮崎の中心市街地の再生をお誓いする。

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登録日 2010年3月30日(火曜)00:00

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