コラム・事例紹介

第42回 まちづくりコラム 「シャッター通り再生計画 実践編」その1 足立 基浩

足立 基浩

足立 基浩(あだち・もとひろ)

自己紹介
1968年東京生まれ。2001年ケンブリッジ大学大学院土地経済学研究科にて博士号(Ph.D)を取得。現在、和歌山大学経済学部教授(2010年4月より)。2007年よりフランス・ユーロメッドビジネススクール客員講師)集中講義担当)。元新聞記者の経験から、現場と理論をつなぐ経済学者を目指す。日本国内300箇所、イギリス国内約100箇所の調査を行う。2005年より現在に至るまで、学生と共に和歌山市の中心市街地にてオープンカフェWithを経営(10月~12月)。「一人からでも始める街づくり」、が持論。

主要著書
■『シャッター通り再生計画』足立基浩 ミネルヴァ書房 2010年 (日本経済新聞の書評(7月11日)にて紹介された)。
■『まちづくりの個性と価値』足立基浩 日本経済評論社 2009年 (日経グローカル誌の書評(No.144、2010年3月15日)にて紹介

シャッター通りは再生できる

私が過去17年間にわたって調査を行ったイギリス経済と中心市街地。日本とイギリスは共に島国であり、議院内閣制の国である。制度の類似性が高い国の一つと私は考えているが、そのイギリスでは中心市街地が元気である。

「テスコ」や「セインズベリー」など郊外型店舗も進出しているが、イングランド地域の地方都市のほぼすべての中心市街地に週末は人であふれている。中心市街地のシャッター通り化などと揶揄される日本との違いはなぜだろう。

都市の再生には複雑な要因が絡み合っていて、活性化の秘訣を探る作業は楽ではない。しかし、私は観光客も楽しめる雰囲気・店舗構成の存在こそがイギリスの中心市街地の強みであり、活性化の主要因のように思えてならない。

観光客が訪れて楽しいのは、つまり、その地方にしかない個性が中心市街地に宿っているからである。そこにしかない蜂蜜屋、ティーショップなど、全国チェーンもあるけれどその柱は個性的な街のたたずまいと店舗の魅力なのである。これは、私がイギリスで2回ほど実施したアンケート調査の結果でも裏付けられている

では、日本はどうか。

日本では、多くの地方都市がミニ東京を求めるあまり、特に過去30年において個性を失ったように思える。どの町を訪れても駅前の景色は似ている。しかも、東京への交通の便がよくなるにつれて、地方の「ミニ東京」は相対的に色褪せて、この10年ほど特にシャッター通り化が社会問題化したのだ。

ではどうしたらよいのか。

中心市街地の観光都市化のすすめ (無理を承知でがんばる心意気)

その一つに中心市街地の観光都市化が挙げられると思う。

中心市街地の観光都市化では滋賀県の長浜市や大分県の豊後高田市、埼玉県の川越市などの事例が成功例として知られている。いずれも個性的な町並みを保存、回復することで再生への糸口を見出した。

しかし、そのような景観が備わっていない町はどうしたらよいのか。私が住んでいる和歌山市の中心市街地は残念ながら町並みも統一されていないし、個性的な店舗も少ないように思える。しかし、それは、まだ見つかってないだけであって、再発見し、その宝を磨けば輝くものもあるはずである。

足立基浩研究室ではこうした問題意識のもと、中心市街地の観光都市化のためのはじめのステップとして、(1)街の魅力を再発見するためのオープンカフェ事業(2005年10月から毎年秋の期間、現在まで)と、(2)中心市街地の魅力をマップ化したものを学生達が実際に歩いて解説する動画サイト「わかやま散策隊」の実施(2011年1月スタート)の2つの事業を実施している。われわれの組織は行政ではないので、何か施策を行うには自分たちで予算をとったり、場所の交渉を行ったりはすべて大学生や地元企業・NPOが行っている。
今回のコラムでは、オープンカフェ事業について紹介したい。

6年間継続しているオープンカフェ事業

カフェWith2007年版
カフェWith2007年版
地元小学校と野村證券和歌山支店の若手社員さんとの協働カフェ
地元小学校と野村證券和歌山支店の
若手社員さんとの協働カフェ
私のゼミの学生達を中心に(総勢毎年20~30人程度)、和歌山市の中心市街地の活性化のため過去6年間、秋から冬にかけて毎年市街地の橋の上でオープンカフェ事業を実施している。このカフェは近場なのに何故か交流のない和歌山城と中心市街地をリンクさせる位置にあり、つまり観光客を呼び込む導線の役割を果たしている。お客さんは街を歩き、カフェで少し休んでもらい、学生達と街づくりについて会話をすることで、街の個性を再発見する手がかりになると考えている。

2007年のカフェの場合は、約5ヶ月間にわたり商店街の空き店舗を借りて週末 (金、土、日曜日)のみカフェを実施した (店舗名は「カフェWith(わかやまいいとこはっけん、の英文頭文字でWith」)。

カフェWithでは、学生達がカフェのメニュー(しらす丼(500円)など)を企画し、徹底的に地元料理(=個性)にこだわった。また、イベントは地元の皆さんの協力を得て実施することとなり、例えば、物産販売、踊りなどのイベントは市民参加を基本としている。

毎回のイベントのおかげで特に週末には1日に、150人から200人ほどの客が訪れ、2007年の末には「NHKカフェ(和歌山市の歴史アーカイブ(ビデオ)を放送)」、2008年1月には裁判官が主催する「裁判官カフェ(地元の裁判官が主体となり運営。裁判員制度の説明や、市民が法服を着て記念撮影)」など毎週様々な事業を実施した。学生達も街の歴史を勉強し、市街地の観光案内も実施した。放置していればシャッター通りのままが、市民の企画と学生パワーと共によみがえった。

2009年のカフェや昨年度(2010年)のカフェでは、野村證券や紀陽銀行、花王石鹸までも加わって一緒にカフェを実施した(店員や共同イベントの実施)。小学生など教育機関の参加も増えている。さらに、和歌山出身の慶応義塾や早稲田の学生の参加もあった。中心市街地を観光都市化するためには、まず自らの町の現状を市民が理解しなければならない。この当たり前のことが共有できたように思う。

次のステップは、今ある魅力を大阪など近隣に知っていただく作業だ。

これは、2011年1月17日からスタートした、「わかやま散策隊」と呼ばれるプロジェクトで、地元の大人と学生がマップを作成し、実際に歩き、その紹介ドキュメントを現在はやりの動画サイト(You Tube)で発信するというものである。魅力が少なく見えた中心市街地に意外にも多くの知られざるスポットを見つけることができた。

先日行ったマスコミへの記者会見では、4大新聞紙の記者すべてとNHK,地元新聞などから取材を受けた。この点の詳細は、次回のコラムで紹介したい。

 

その2に続きます

関連リンク

カフェWith

 

登録日 2011年2月08日(火曜)00:00

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