コラム・事例紹介

第67回 まちづくりコラム ソフト・ディベロップメント考(前編)土肥健夫

土肥 健夫

土肥 健夫(どひ・たけお)

株式会社事業開発推進機構 代表取締役
早大卒業後、松下政経塾に入塾。松下幸之助氏の指導の下、地域活性化・都市経営・商業振興等に関する研究に従事。セゾン・グループの流通・開発関連のアソシエイト・プランナーを兼務。平成3年、現会社設立。平成8年、中小企業診断士として登録。行政、流通関連業からの委託に基づく計画策定や、地域活性化、商業・観光関連施設の事業プロデュースを専門とする。ご当地検定黎明期、中心市街地活性化の一環としての明石市における「タコ検定」のプロデュース、須崎市の「鍋焼きラーメン」を基軸にした活性化、別府市の「オンパク」に関連した常設事業者育成プログラム等、限られた市場規模でも低コストで自立・継続的な運営可能なソフト事業の確立や、地域ブランドの構築に従事。地域活性化伝道師、中小企業基盤整備機構中心市街地サポートマネージャー、同中心市街地協議会アドバイザー。

ソフト・ディベロップメントとは

 まちづくりにおいて「面的な魅力・ポテンシャルの向上」というと、大規模な市街地再開発事業や土地区画整理事業、大型の複合施設整備事業等がイメージされる。これらは長い歴史の中で多くの実績があり、関連した知見も蓄積してきた有効な手法である。だが高度な関連手法を用いても、実施可能なエリアが限られたり、高額の投資や一定のリスクを伴ったりもする。
 ソフト事業で再開発・区画整理・複合施設整備のような大規模なハード事業を補ったり、ハード事業以上の効果を上げたりすることもあり得る。ハード事業にも数多く関わったが、他方でソフト事業の有効性も信じている。ハード・ソフト、いずれか一方のみで問題が解決すること等、在り得ない。ただ個人的な言葉使いだが、ソフト事業を起点にした面的な魅力・ポテンシャルの向上に係る取り組みを、「ソフト・ディベロップメント」と呼び、推進している。一例として兵庫県明石市において事業プロデュースに関わった「明石タコ検定」を用いて考え方を整理する。

事例の概要と検定と言う形式の選択理由

 明石市はマダコの漁獲高日本一を誇り、近畿圏有数の海産物関連商店が集積した魚の棚商店街等もある。他方、大阪・神戸に近接しており、これらの都市に通勤・通学し、明石市には寝に帰るだけの者も多く、市への思い入れの希薄さも目につく。こうした状況の下、市への思い入れの強化、“明石ダコ”をはじめとした海産物や市全体の知名度・イメージの向上等が中心市街地活性化をはじめとしたまちづくりのための重要な課題となっていた。
 対応策としてマスコミを活用したキャンペーンや広告・宣伝のような方法もある。だが一方的な情報発信に留まり共感を得難いし、効果も一時的なものに留まる。市内外の多様な人達が積極的に明石に係る情報と関わったり、親近感を醸成させたりする仕組みを構築しつつ、市全体の知名度・イメージを高めたいというのが当初からの問題意識であった。

図表1.検定による関心・親近感の醸成・強化

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 タコ検定実施当時、まだ御当地検定は黎明期にあった。ただ様々な生涯学習活動が活発に行われていること、検定ならば暗記が合格の条件となるため、受験者の間に明石についての知識が定着すること、受験料等の収入が得られること等を評価して、「検定」という形式で、「受験者に積極的・主体的に明石のことを身に付けて頂く」という方針が固まった。

鍵を握るテーマ、及び対象層設定

 ソフト事業を起点にした面的な魅力・ポテンシャルの向上となれば「検定」のテーマが成否の鍵を握る。当初は「明石検定」等、一般的・抽象的に地域に関連した全般的な知識を問うことも検討した。だがこれでは多くの受験者を獲得することは難しい。こうして日本一の漁獲高を誇るマダコや、タコの持つ、どこかコミカルで親しみ易いイメージから、「タコ」をテーマに設定した。事業主体は、中心市街地活性化法に則ったまちづくり推進組織である明石地域振興開発㈱とし、明石商工会議所の支援を受けつつ実施することとした。
 対象層も実際の開発や施設整備等と同様、あるいはそれ以上に非常に重要である。タコ検定の対象層としては、従前、人口構成上高比率を占めながら、京阪神に通勤し、明石には“寝に帰る”だけの30代から40代の男性を主体とすることとした。知的好奇心が強く、自己研鑽にも積極的な彼らの特性に鑑み、料理・食材を切り口にするとともに、飲食店や食料品店等で、自分の知識を同伴する家族・友人・知人等にひけらかす道具として認定証を使って貰うべく、従来の表彰状形式でなく携帯可能なクレジットカード型の認定証を用意、更に彩色用黒インクに本物のタコ墨を混ぜ込むようなこだわりまで検討した。
 

図表2.タコ検定の認定証

kentei

 

 検定実施に関する広報も芸能人の“さかなクン”をはじめ、タコや魚に関する有識者・著名人等に、国文学の権威が監修した古語調の文体を墨字でしたためた果たし状を送ったり、ネット上で検定を試せるようにしたりする等、マスコミが“自主的に取り上げる”よう工夫を凝らした。こうした工夫が奏功し、狙った対象層に様々な媒体からの情報が円滑に伝わり、検定の申し込み開始直後から多数の応募者が殺到した。

 

登録日 2014年3月14日(金曜)01:21

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