コラム・事例紹介

「地域密着型のよそ者」タウンマネージャーの新しいかたち(後編)
商店街活性化・まちづくりアドバイザー 熊谷 慎一さん

熊谷 慎一

商店街活性化・まちづくりアドバイザー
熊谷 慎一(くまがい・しんいち)


株式会社全国商店街支援センターの支援事業担当マネージャーとして、約30都道府県の商店街支援に携わった後、2016年より商店街活性化・まちづくりアドバイザーとして独立。千葉県八千代市、長野県佐久市でまちづくり事業のマネージャーとして活躍中。静岡県出身、48歳。

「八千代台まちづくり合同会社」についてもお聞かせください。

 まちづくりを進めていく中で、若手商業者の存在はとても重要です。彼らが自ら事業を進めていくためにも、自らの資金で会社を作ろうと、2017年には「八千代台まちづくり合同会社」を設立しました。出資者は13人。業務執行社員が9人。
 よそ者である僕が入ったことによって繋ぐことが出来たというのもあるかもしれません。僕がハブになって既存の活動や団体を繋げ、自ら行動を起こす人たちを巻き込み、時には行政と連携させたり…それが、僕の役割だと思っています。

 「八千代台まちづくり合同会社」の主な事業の一つに、八千代台駅西口の北本通りを会場に半年に一回(春・秋)開催している本のイベント「BOOK STREET」があります。メインの企画は本の交換市です。当日、いらなくなった本を3冊持ってくると、好きな1冊と交換できるというシステムで、路上に3,000冊もの本が並びます。来場者数は毎回3,000人以上。現在、5回を数え定着してきました。
 当初はリノベーションをやろうと有志数名で会議を重ねてきましたが、いきなり不動産事業に乗り出しても、地権者を含め周りの人も理解してくれないだろうと。だったら、まずイベントを仕掛けてみようという話になったんです。

 

BOOK STREET春の本祭り2018①

メイン企画は市内最大の「本の交換市」。
歩行者天国となった路上に約3000冊の本が並ぶ。

 では、どんなイベントをやろうかと考えた時、会場の北本通りの「本」は文字通り「Book」って意味なの?というトボけたことを言い出したメンバーがいました。そこから、本のイベントをやろうかという話になったのですが、よくよく考えてみると、通りには図書館があり、また周辺には自治会館や公民館、小学校など文教施設が多い土地でもある。ちょっと文化的な香りのするエリアになるといいなぁ、というのもありました。
 イベント当日は、飲食やちょっとした物販の出店もあり、そこからは出店料をとっています。おかげさまで、毎回黒字です。本も、交換市とは言いながら、手ぶらで来た方やもっと欲しいという方には1冊100円で売っています。そう、どんな価値のある本でも100円です(笑)。
 毎回700冊くらいは売れるので、平均7万円程度の利益が出ます。なにしろ元手はタダです。さらに出店料収入で、合計10万円ほどになるイベントです。
 実は、「BOOK STREET」を始める際、「そんなことをやっても誰も集まらない」という人もいました。八千代の悪い面は危機感がないことだ、と言う人もいます。官民ともに変えようとすることに対して、どちらかと言えば保守的な印象です。
 しかし、実際に「BOOK STREET」が始まると、日曜昼間に八千代台の街をたくさんの人が歩いています。こんなに人が住んでいたんだと驚く人もいました。実際に、行動に移すことによって納得させてきた、実証してきた部分があります。
 また、イベントを通じて、空き店舗を貸していただくなど、新しい繋がりもできました。動けば、そこで何かが起きるんですね。
 

BOOK STREET春の本祭り2018② BOOK STREET春の本祭り2018③

このイベントがきっかけとなり起業した飲食店 ストリートパフォーマンスも行われ、開場を盛り上げる

 この春でまちづくり会社は設立2周年を迎えますが、もう少し雇用や創業を生み出すような事業、投資事業を作っていきたいと思っています。ただ、何をやるかは、僕が決めるのではなく、まちの皆さんがやりたいことを事業化していきたい。収益は回っているので、逆にもう少し思い切ってお金を使うような大きな事業をそろそろやってこうという話になっています。
 まちづくり会社では「アドバイザー」という名前をもらっていますが、事務局的な専従者に近い立ち位置です。僕がいなくなっても回る仕組み作りを意識しながらやっていますが、せっかく関わった地域なので今後も何かしらの形で関わりたいですね。そもそも、やっていることが面白いですから。
 もちろん、このまちづくり会社も順調に進んでいるかと言えばそうではない部分もあります。入ってくる人もいれば、離れていく人もいる。複数人がいれば、どこかで思いの違いも生じます。そこを超えて、小さなことでもコツコツ続けていかないといけません。迷い悩みながらも、動きながら進んでいく、それでいいんじゃないでしょうか。

まちのレンタルスペースORECCHIO

まちのレンタルスペースORECCHIO
元耳鼻科医院をリノベーションしたレンタルスペース。
ORECCHIO=イタリア語で「耳」の意味

八千代市以外に、「岩村田でタウンマネージャーを務める」ことになったのはどのような経緯ですか。

 長野県佐久市は、人口10万人弱。中でも岩村田商店街は、最寄りの北陸新幹線JR佐久平駅から小海線で1駅目にある中山道の歴史ある宿場町です。商店街として、長年様々なチャレンジをしてきており、経済産業省中小企業庁「はばたく商店街30選」にも選ばれています。
 しかし、これまでのようなソフト重視の取り組みから、今回、大きな課題の一つである建物の建替えを含めた新たなまちづくりづくりを進めようとしているところです。
 僕自身は、2017年夏から中心市街地活性化協議会準備会へ専門人材として派遣されていました。岩村田には、月平均10日くらい、2泊3日を3回程度滞在しています。拠点として、商店街内のシェアショップの中に事務所を借り、商工会議所にも机を用意していただいています。様々な事業を検討協議しながら、中心市街地活性化基本計画策定を目指していますが、いくつかやろうとしている事業のうち、最大の目玉は「商店街の老朽化した建物の建替えによるまちの再整備」です。
 主な地権者の方に一通りヒアリングし、遠方の方にはアンケートを実施し、建替えに関する意向調査を行いました。特に、地元の人たちとは膝を突き合わせながら話をしてきました。そこから見えてきたのは、商売をそこで続け、次の世代に引き継いでいく方がいる反面、頭の隅に廃業を意識しつつも不動産の扱いに苦慮している方が非常に多いということです。
 一方、そこに住まわれていない方については、親が持っていた土地建物を引き継いだものの、放置されている方が多い。建替えを検討するにあたって、それぞれの事情にどれだけ親身になれるか、率直な意見をどれだけ聞き出せるかが鍵だと思っています。個別に話を伺うと、実はこのままじゃまずいと思っていた、という方は非常に多い。もちろん、ネガティヴな方もいますが、そのような意見を聞くことができたのも大きな成果だと思っています。
 地権者は約130人。そのうち、実際に顔合わせてヒアリングできた方は、70人くらいです。「建替え」というワードが出た時点で、話も聞いてもらえず門前払いされるケースもありました。逆に、家の事情など地元の方には話さない内容を僕に話してくれたりもする。よそ者だけに言いやすい部分もあるのではないでしょうか。「地域密着型よそ者」の本領発揮といったところです。
 よそ者とは言え、建替えに関する勉強会などを開くと多くの方が参加してくれます。毎回4~50人くらいの方に来ていただいています。こういう話が無かったら、表立って自分の意見を発することはなかったであろう方も、意見を言うきっかけになっているのかなと思います。出席率の高さは、興味の輪が広がっている証ではないでしょうか。
 当然、建替えとなると賛成、反対の両方の意見が混在するため、課題のハードルは非常に高いのですが、普段、商店街の活動に参加していない方でも、問題意識をお持ちの方はたくさんいます。エリアとして取り組まなければならない課題だという理解が浸透しつつあると感じています。最近は、地権者さん同士でも話し合いがスタートし始めているようです。
 岩村田は元々地元の人たちが頑張ってきた商店街。今回は民間が主導して動いていますが、よそ者がいきなり建て替えの話を主導するのはもちろん無理です。実際に現場に入り、僕がどう動いたら周りが上手くまわるのかを意識しながらやっているところです。

bookstreet

老朽化建物の建替えによるまちの再整備を目指す岩村田商店街


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関連リンク

株式会社全国商店街支援センター
八千代台まちづくり合同会社
「地域密着型のよそ者」タウンマネージャーの新しいかたち(前編)



登録日 2019年3月26日(火曜)00:00

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