コラム・事例紹介

「プレイスメイキング」合意形成の新しい手法(後編)
有限会社ハートビートプラン 園田 聡さん

園田 聡

有限会社ハートビートプラン
園田 聡さん(そのだ・さとし)


2009年工学院大学大学院修士課程修了。商業系企画・デザイン会社勤務を経て、2015年同大学院博士課程修了。博士(工学)。専門は都市デザイン、プレイスメイキング。現在は、有限会社ハートビートプランのメンバーとして大阪・東京を拠点に全国各地でプレイスメイキングの理念・手法を用いた実戦に取り組んでいる。工学院大学 客員研究員。埼玉県所沢市出身。34歳。

プレイスメイキングについて教えてください

 「プレイスメイキング」とは、都市デザインをトップダウンで行政が計画を作成するのではなく、様々な関係者を巻き込んでボトムアップでやっていくという手法です。
 「プレイス」=「愛着を持たれるような居場所」をどう創っていくか、プロセスをデザインする概念です。今までのデザインの対象は、空間をどう創るか、経済的にそれをどう持続させるかということでした。しかし、プレイスメイキングの手法は、そこに市民も専門家も行政も商業者も関わって、単純なボトムアップではなく、対等な立場で一緒に一つの場を育ていきます。それを点から展開し、街全体の価値として高めていく手法です。

プレイスメイキングがもたらす価値

 プレイスメイキングには、ヨーロッパの流れとアメリカの流れの二つがあります。ヨーロッパの場合、建築・都市計画・ランドスケープなど専門家が都市の分析手法を行いながら、グランドレベルで人や生活にフォーカス・調査し、提案をしていく。どちらかと言うと、プロが提案したものを地元の行政・組織が進めていくというスタイルです。

 対してアメリカの場合、計画を作ることよりも、まずは現場に入って観察することから始め、実際に事業所や地権者とそこで行うアクションについて一緒に話し合う。結果が出るまでずっと伴走するというスタイルです。
 そこで、僕がメインにやったのはアメリカ流の手法です。既にアメリカでは、1975年から「Project for Public Spaces」(以下、PPS)というNPOが、街に入る調査方法や利害関係者(ステークホルダー)との合意形成のタイミング、社会実験などを体系立てて整理してきました。PPSのチームは僕が現地でヒアリングをした当時(2017年)は20人程度で構成されていましたが、建築や都市計画が専門という方は2~3人ぐらいで、あとはジャーナリスト、写真家、アーティストなど、いわゆるまちづくりの専門家と言われる人たちではありませんでした。ただ、現場でアクションする場合、ジャーナリストが記事にしてムーブメントを起こす、フォトグラファーがビジュアルとしてメッセージを伝える、不動産のスペシャリストが地権者との交渉を行うなど、複合的なチーム編成になっています。現場をどう動かして、どう合意形成するかまで手法論として確立されているんですね。
 アメリカでは、そのやり方がうまくいく土壌として、寄付の文化があると思います。必ずしも、クライアントは行政ではなく、大きな企業や富裕層の寄付金でPPSに業務を委託し地域再生をしていくケースもよく見られます。もちろん、税金対策の意味もありますが。それに、地域再生の対象となるようなエリアは治安が悪い場合が多いので、地域が良くなればすぐに不動産価値やテナント賃料に反映されます。そこで、ビルオーナーがクライアントになる場合もあるわけです。
 僕もPPSの手法を学び、それを日本の公共空間にどうやって応用していくかを研究してきました。
 日本で従来からある住民参加型のワークショップの手法は、まずは誰が地域の看板を背負っている利害関係者かを考えてメンバーを集めるというのが最初だと思います。メンバーが決まると自ずと対象エリアが決まってくる。それによりどれくらいの予算で、どういうことをやるのか議論をした上で、計画や予算を作成し、アクションを起こしていく、という流れになりますよね。
 それに対して、プレイスメイキングで掲げているのは、まずは「面白い場所を見つける」ということです。もしかしたら商店街の一角の空き地かもしれないし、どこかの公園かもしれない。そこで面白いことができそうだと感じたら、いわゆる「この指とまれ方式」で人を集め、3~4人でも仲間が集まったら、まずはアクションを起こす。自分たちの考えやアクションが共鳴し、コトが現場で起き始める。それが評価されれば仲間が増える。最終的には、商店街組織やエリアマネジメント規模の人間が賛同し、次に何をしようかという展開になるんです。
 その意思決定のプロセスが、従来型のワークショップや会議と違うんじゃないかと思っています。もちろん、どちらが良い悪いではなく、場所に合った方法があるという前提の話ですが、今までの日本のやり方では、最初から色々な人が入ってしまうので、逆になかなか意見がまとまりにくい場合が多いのではないでしょうか。
 せっかく良いアイデアが出ても、一人でも賛同しない人がいるとアクションが起こせなかったり、行政計画も民間計画も一応プランは作れますが、じゃあ一体誰がやるのか、成果が出なかった場合は誰が責任をとるのか、といった議論に終始してしまい、結局アクションを起こすまでには至らない場合も多かったのではないでしょうか。
 プレイスメイキングの場合は、僕たちがまず、どういう立場の方まで合意形成しておけばいいか、など仕掛けかたのお手伝いをし、「最小限の意思決定のメンバー」ですぐにアクションを起こしてしまいます。やはり、コトが起こると周りにも説明しやすいんですよね。最初は半信半疑だった人たちも、例えば1日だけでも場を活用して面白いコトが起こったのを見て、これは自分たちも参加しなくては、となってくるわけです。

多様な活動の受け皿としての「公共空間」

 とは言え、それほどスムーズに事が運ぶ訳ではありません。そこで、僕らが最初に使うのは主に公共空間の場合が多いんです。民地の場合、当然ながら利害関係のある既存組織は絶対に外せなくなり、その方たちの完全な合意形成が取れない限り動けなくなります。確実な収益が見込めるような事業の場合はもちろん民間事業者の方の方が意思決定が早く動きやすいのですが、収益性よりも公益性や公共性が重要で大きな利益が出るわけではない取り組みの場合は合意形成にも時間がかかります。一方で公共用地の場合は、一応行政からは住民の意見を聴くように言われますが、意思決定は当然地権者である行政がすればいい話で、地域へは基本的なご挨拶はもちろんしますが、まずは新しいチャレンジを見守ってほしいとお伝えします。さらには社会実験という名の規制緩和の手法がとれます。

 例えば、駅前広場でマルシェイベントをする場合、その土地がどこかの商店街組織のエリアに入っていたとしても、行政としては公募という方法をとらざるを得ない。すると、組合に所属していない面白い若い事業者が、しがらみを気にせず参入できるんです。クオリティの高い事業者を選ぶと人が集まり、その結果を見た商店街組織も一定のイメージを持って協力できるという図式です。
 もちろん、それでも納得しない方々もいて、現場に入ると怒られたりもします。「俺たちが長年頑張ってきたのによそから来て一体なんなんだ?」と。ですが、その状況を打破しようと思うと今までのレールの上では難しい。この指とまれ方式で協力的な方がいるのであれば、その方たちが動ける状況をどう作るかがポイントになってきます。行政絡みの場合がやりやすいのは、公平性の観点というロジックで、柵(しがらみ)をうまく外せるところ。さらに、人口減少により歳入が減っていく中で、公共空間の維持管理に知恵を絞る必要もあります。
 一方で、民間に関しては明確なWin-Winの関係をお互いに共有することが大切で、単純な理想論やあるべき論ではコトは動かないので、必要となるキーマンのところには顔を出して一緒に飲みに行く。先方が帰らない限り僕らも帰らず、結局朝4時みたいなことも。まぁ、よくある話ですが(笑)。
 こうした手法は、最初は点からですが、最後は一定の成果が見え、その事実をベースにした合意がとれたところで、はじめて計画を策定していきます。必要であれば行政計画にも位置付けます。今までの「合意形成→計画づくり→アクション」という順番を、「小さな合意形成→アクション→合意形成→計画づくり」にするということです。正にプロセスの反転ですね。

プレイスメイキングの11の法則

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有限会社ハートビートプラン
「プレイスメイキング」合意形成の新しい手法(前編)

登録日 2019年3月26日(火曜)00:00

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